◆ガス 首都圏市場、攻防じわり

 
 ガス小売り全面自由化の開始後にスイッチングを行った消費者は、全国で75万件を超えた。最もスイッチングが多いのは関西だが、新規参入の多い首都圏で競争が激化しつつある。

 首都圏では、これまで東電エナジーパートナー(EP)と日本瓦斯(ニチガス)が手を組み、東ガスの顧客獲得に注力。この1年で東電EPは12万件以上、ニチガスは8万件以上の顧客を東ガスから奪った。

 東電EPとニチガスは、ガス供給と保安を請け負う東京エナジーアライアンスを設立し、新規参入の受け皿にもなっている。東電EPからガスの供給を受けて新規参入する企業には、大東建託系のガスパルやJXTGエネルギー、イーレックス、HTBエナジーなどが名を連ねる。

 さらに、域外からは中部電力と大ガスが首都圏でガス販売を行うCDエナジーダイレクトを設立。18年度以降はこれらの企業も加わり、顧客獲得競争を繰り広げることになる。

 首都圏では、新規参入者が熱量調整設備の建設にも乗り出した。東電フュエル&パワー(F&P)はJXTGエネルギー、大ガスと川崎市に熱調設備をつくり、20年度から運用する。将来的にはここを経由して家庭へのガス販売が行われる見込みだ。

 中部、関西、九州はいずれも地元の電力会社が新規参入に名乗りを上げた。ガス顧客の獲得数は関電が40万件、中部電力が10万件、九州電力が4万件を超えている。

 これらの新規参入者の動きに、既存ガス会社は電力事業の強化や販売エリアの拡大で対抗している。

 東ガスは家庭向けのガス・電気セット販売に力を入れ、100万件を超える電気の顧客を獲得。大ガスは中部電力との共同会社にみられるように、関西と首都圏の2本建てで事業を成長させていく方針に転換した。東邦ガスは電源の拡充と調達の安定化に努めていく方針。西部ガスは非エネルギー事業の拡大を急いでいる。

 ガス全面自由化から1年がたったことで、制度をさらに見直す動きも出てきた。広域的な競争をする上で課題となっていた逆流託送については、電力・ガス取引監視等委員会が特例認可を実施。今後はLNG(液化天然ガス)基地の第三者利用に関しても見直しを検討していく。

 ガスは電力と比べて競争環境が十分に整っていないとの指摘もある。今後、基地開放などの課題が解消すれば、競争がさらに活発になる可能性もある。

電気新聞2018年4月3日

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