初挑戦は散々な結果に終わった

 

「資格手にしたい」まず挑戦

 
 「電験3種を受けてみよう」。そう決意したのは入社5年目(2018年)の春。3年間の広島勤務が終わりに差し掛かった頃だった。

 20代も半ばを過ぎ、何かしらの資格を手にして活躍する同級生が増えてきた。そんな姿を見聞きし、何となく自分も資格を持ちたいと思うようになった。

 電気新聞の記者ならば、取得すべきは電気に関する資格だろう。そう考えて調べたところ、実務経験なしで取れる資格は電気工事士と電気主任技術者の2つに絞られた。

 どちらも簡単ではないが、前者は2次試験の実技が気になった。どうやら指定通りに電気回路を組み立てなければならないらしい。とてもじゃないが不器用な自分にこなせる自信が湧かない。
 

文系もチャンスあり?

 
 対する後者は3種であればマークシート形式のペーパーテストだけ。この単純明快さが魅力的に映った。

 もちろん電験は計算問題の比重が大きく、数学や物理をはじめ理系分野の知識が必要になることは十分に理解していた。

 実は本紙には7年ほど前に電験3種に合格した記者がいる。ただその記者は理系として大学を受験し、入学した。大学レベルで理系科目を深く、長い時間かけて勉強した経験がある。

 自分は一貫して文系だった。学生時代の専攻は人文科学に近く、数学は大学受験以来ご無沙汰。物理など理科科目と向き合ったのは高校受験が最後だ。

 かなりのハンデを感じつつも、決して無謀な挑戦だとは思わなかった。事務系の社員が合格した、といった話は取材先でも時々耳にしていた。

 ならば理系の学問に縁がなかった自分でもチャンスはあるはずだ。受験を公言したわけでもないので、嫌になったらやめれば良い。取りあえず18年度の試験だけでも挑戦することにした。

 18年度の試験日は9月の第1日曜日。本番まで残された時間は半年ほどだった。

 勉強の進め方だが、迷うことなく参考書での独学を選ぶ。予備校に通わなかった理由は、やはり費用だ。仕事で必要ならともかく、半ば暇つぶしで受ける試験に数十万円は出せなかった。
 

参考書2冊購入

 
 購入した参考書は2冊。理論が1冊、その他3科目がまとめて掲載されているもの1冊だ。過去問はこれらを読み終えてから買い足すことにした。

 電験には科目合格制度があり、年ごとに科目を絞って勉強する人もいる。

 自分は全科目の全範囲に一通り目を通すことにした。早めに試験の全体像をつかみ、来年度以降も続くであろう勉強の負担を減らす。そんな狙いがあった。

 参考書のアドバイスにも従い、当面は理論、電力、機械の3科目に集中。暗記要素の多い法規をラスト1~2カ月に回した。

 平日含め、毎日2時間程度は参考書と向き合う。基本的には自宅で黙々と読むだけ。資格勉強では通勤時間を活用する人も多いが、自分はやらなかった。あくまで仕事や勉強の疲れを取る時間に充て、余計なストレスをためないようにした。
 

手はじめの「理論」に苦戦

 
 はじめに手をつけた科目は、もちろん理論。静電気、磁気、交流といった電験攻略の基礎となる超重要分野が続くのだが、これらの単元で早くも行き詰まる。

 電気を生業(なりわい)とする技術者にとっては常識、というより必須の知識なのだろう。ただ電気を「使うだけ」だった身には普段意識したことがない話題ばかりな上、目に見えないものがほとんど。出てくる公式や説明されている現象がどんな内容なのか。具体的なイメージが湧かず、ちっとも頭に入ってこない。

 これは致命的だった。電験では「公式に数字を当てはめて終わり」といった問いは皆無。一つ一つの式や定理が何を意味し、どんな場面で使うのか。きちんと頭に入っていないと太刀打ちできない。

 自分はどうだったのかといえば、オームの法則や力率の計算といった超基本事項ですら、設定をいじられると手が止まる始末。過去問では問題の設定や求める内容が理解できないことはザラ。答えを見ても「なぜ今、この公式を使うのか」「どうしてこんなベクトル図を描いて考えるのか」など、疑問が尽きない。

 理論の理解不足は他科目にもストレートに連鎖する。電力の電圧降下や機械の回転機、法規の接地に関する問いなどは、その典型だ。

 

試験本番はお手上げ

 
 独学だったので当然聞くべき相手もいない。打開策が見い出せないまま時間だけが過ぎていく。

 迎えた試験当日、従前の予想通り4科目ともお手上げだった。簡単なのか、難しいのかも判断できない。白紙では受験料がもったいないので、マークは適当に埋めた。時間が余り過ぎて途中退室しようと思ったほどだ。自己採点など、する気にもならなかった。

 それから1カ月半。受験したことすら忘れた頃に結果通知が届く。中を開くと「不合格」の文字が仲良く4カ所に並んでいた。(宮川健)

 

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(この記事は本紙連載「電験3種・独学で攻略」の「上」です。「下」はこちら

電気新聞2023年2月15日