東京電力ホールディングス(HD)は29日、同社の100%出資で電力小売りや関連サービスの提供を手掛けるベンチャー企業のTRENDE(トレンディ、東京都千代田区)を設立し、同日から営業を始めたと発表した。当面は東北、東京、中部、関西、中国、九州の6エリアの家庭向けに、各エリアの従量電灯より月数百円程度安く電力を販売する。3~5年後をめどに、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせ、家と家の間で電力を直接売買する事業モデル構築を目指す。
自由化による競争が進んだ欧州では、大手エネルギー会社が割安な電気料金や、クリーンな発電手法を売りにしたセカンドブランドを立ち上げる事例が珍しくない。ただ、日本国内で大手電力会社が自らの小売り部門とも競合するベンチャーを立ち上げるのは異例の試みだ。
大きな特徴の一つは、外部から招へいした起業家に経営を委ねる点だ。金融業界出身でブロックチェーン開発やフィンテック分野で起業経験を持つ妹尾賢俊氏、同じくベンチャー立ち上げの経験が豊富なジェフリー・チャー氏が代表取締役を務める。
同日、都内で会見した東電HDの見學信一郎常務執行役は「様々なアイデアをサービスに移し替える実行力、スピードに期待している」と両氏への期待を語った。
TRENDEの資本金は4千万円。東電HDの100%出資でスタートするが、今後、事業拡大向けて外部からの資金調達も検討する。
TRENDEは「あしたでんき」の名称で、29日から家庭向けに電力販売を始めた。料金プランは一般的な家庭向けの「標準プラン」と、使用量の多い家庭向けの「たっぷりプラン」の2種類。基本料金は標準プランがゼロ、たっぷりプランが3千円。電力量料金も1段階のみのシンプルな料金体系とした。申し込みはオンラインで約10分で可能という。
自社電源を持たず、卸電力取引所など外部からの調達を基本とし、需給管理業務は当面外部に委託する。オンライン営業に特化し、販管費を抑えることなどで割安な料金水準を実現する。今後、数年で数万件規模の顧客獲得を目指す。
関東エリアで東電エナジーパートナー(EP)の従量電灯プランの家庭(40A、月電気使用量300キロワット)がTRENDEの標準プランに切り替えた場合、月の電気代が約400円安くなるとしている。
電気新聞2018年3月30日
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