東芝は仮想発電所(VPP)事業を含めた「総合再生可能エネルギー企業」への進化を目指す。世界的に火力の新設が伸び悩む一方、再生可能エネの導入量が急ピッチで拡大すると判断。洋上風力システム事業への参入を検討するほか、蓄電池を組み合わせるなどして自家消費型の太陽光システム事業に乗り出す。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)といった先進デジタル技術を駆使し、再生可能エネの大量導入に必要な電力需給調整力を提供するVPP事業も本格化する。

 東芝子会社の東芝エネルギーシステムズは1月1日付で社長直轄組織として「エネルギーアグリゲーション統括部」を新設した。太陽光システム事業と風力システム事業、デジタル技術を用いた需要家エネルギー管理事業の3部門を新組織に集約した。

 東芝は2011年に韓国ユニスンと資本提携し、風力システム事業に参入した。同社の風車は現在、2千キロワット級機が中心。大型機や洋上風力を手掛けないため、同社以外から風車を調達することも視野に洋上風力への参入戦略を練る。

 太陽光システム事業は今後、蓄電池も組み合わせたシステムの発電コストが電力会社から購入する電気料金と同等以下になる「蓄電池パリティー」の時代が到来すると予想。余剰電力買取制度で買い取り期間が10年に設定された住宅用太陽光が19年11月から順次期限を迎える「2019年問題」も踏まえ、自家消費型事業の商機を捉える。開発段階にあるフィルム型太陽電池の市場投入も目指す。

 太陽光と風力の関連事業ではIoTの適用も拡大。「見える化」「遠隔監視」「市場に連動した蓄電池制御」などVPP事業への展開も加速する。日本で20年に需給調整市場が開設されることを念頭に、電力会社などと共同で進める実証の成果を踏まえてVPP事業の本格展開を狙う。

 VPP事業は、需要家の節電量を束ねて電気事業者に提供するネガワットアグリゲーター事業と蓄電池をIoTで制御するサービス事業からスタートする方針。自動車メーカーと連携し、電気自動車(EV)を活用した実証を始めることも含めて検討する。

電気新聞2018年3月9日