2月、ロシアがウクライナに侵攻した。資源大国が仕掛けた戦争に、世界のエネルギー秩序が崩れた2022年だった。国内では3月、福島沖地震の影響で複数の火力電源が脱落。初の需給逼迫警報が発令された。6月にも需給逼迫注意報が出されるなど、電力供給システムの脆弱さが浮き彫りになった。こうした危機的状況を背景に、政府はエネルギー・環境政策の抜本改革に着手。12月のGX実行会議で、原子力発電所の運転期間延長や次世代革新型炉への建て替えを盛り込んだ基本方針を取りまとめた。

<ウクライナ侵攻>
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始は、世界を大きく動揺させた。侵攻を機に、世界的に資源燃料価格が高騰。21年から続く燃料費上昇に追い打ちをかけた。日本へ輸入されるロシア産エネルギー資源の供給途絶への懸念も顕在化するなど、資源のない日本のエネルギー政策、エネルギー安全保障が問い直される一年となった(2月24日、東京都千代田区)

<歴史的な円安に>
 年初には1ドル=110円台で推移していた円相場は、10月には一時1ドル=150円台後半にまで値下がり。1990年以来32年ぶりの歴史的な円安となった。燃料価格の高騰とともに、電力各社の経営を圧迫。燃料費調整制度では、電力全10社が調整できる上限を10月分までに超過。料金値上げの表明が相次ぐこととなった(10月21日、東京都中央区)

<欧州に向けLNG融通>
 ウクライナ情勢の悪化に伴って世界のエネルギー情勢が激動した。2月9日、萩生田光一経産相(手前左から2人目、当時)が駐日EU大使(奥左)、駐日米国大使と会談。日本国政府は、ロシアからのパイプラインによる天然ガス供給に依存する欧州に対し、国内向けLNGの一部を融通する方針を固めた。4月には岸田文雄首相が、ロシア産石炭の段階的な輸入削減を表明。ロシアに対する経済制裁の一環で、先進7カ国と足並みをそろえた

<再稼働へ向け前進>
 原子力発電所の再稼働に向けたプロセスにも前進が見られた。島根県の丸山達也知事は6月2日の県議会本会議で、中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働を「容認する」と表明。中国電力が安全協定を結ぶ全自治体が再稼働に同意した形となった。岸田文雄首相も、4月に行われた会見で原子力の最大限活用に言及。7月に始まった「GX実行会議」では原子力発電所の運転期間見直し、次世代革新炉の新増設・リプレースなど、将来の原子力活用につながる内容を掲げた

<発足10年、新体制に>
 9月で発足10年を迎えた原子力規制委員会は、山中伸介氏(右)が委員長に、杉山智之氏が委員に就任し、新体制が始動した。12月には政府の原子力発電所の運転期間見直し方針を見据え、新たな安全規制の骨子案をまとめた。現行の「40年+20年」に代わり30年を超えて運転する場合、その後10年以内に規制委の認可を受ける方式に改める

<国費投じ抑制>
 エネルギー資源価格の高騰、円安の進行などを背景に物価が上昇した。経営正常化に向けた電力各社の大幅値上げを前に、政府は需要家の不満を抑えるため、兆円単位の国費を投じて電気代を抑制する前代未聞のエネルギー政策実行を決めた。10月28日、政府は電気、ガス料金の抑制を柱とする総合経済対策を閣議決定。同日、岸田文雄首相が会見し説明した

<「ベテラン」も奮闘>
 慢性的な電源不足の中、安定供給を支える一つ一つの発電所での奮闘が際立った。JERAの袖ケ浦火力発電所1号機は営業運転開始から半世紀弱の高経年化火力。22年4月から長期計画停止に入る計画だったが、3月の需給逼迫を受け再登板。所員は安定運転のため、日々の巡視・点検に取り組み、貴重な供給力として活躍した(7月)

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