蒸気タービン工場が並ぶ京浜事業所のタービン工場
蒸気タービン工場が並ぶ京浜事業所のタービン工場

 米原子力建設事業の巨額損失を受けて経営再建中の東芝。稼ぎ頭のメモリー事業を売却した後は、社会インフラやエネルギーなど残された事業で再生を目指すことになる。復活の鍵を握るのは、そうした事業の現場力だ。発電関連事業は京浜事業所(横浜市鶴見区)が中核生産拠点となる。柴垣徹所長は製造期間の短縮やサプライチェーンの整備でコストを下げながら、高い信頼性を武器に厳しい競争を勝ち抜きたい考えを示す。
 

2年分の受注残。御後は中小型火力を強化


 
 京浜事業所のタービン工場を取材で訪ねると、製造中の蒸気タービンが多数並んでいた。柴垣所長は「国内や東南アジアの石炭火力など受注残は十分あるので現在は忙しい状況」と話す。他の機器も含めて2年間分ほどの受注残を抱えているという。

 だが、再生可能エネルギーの急速な低コスト化や石炭火力への逆風もあり、火力を巡る事業環境は厳しい。そこで柴垣所長は中小型火力機器事業を強化する方針を打ち出す。

 再生可能エネの導入拡大に伴い、今後は分散型電源的に利用される中小型火力が増えるとみられている。京浜事業所は大型タービンを得意とするが、10万~20万キロワット前後の中小型タービンにも技術的には対応できる。

 東芝の発電設備は信頼性にも定評があるという。「なかなか壊れないから、実際に使ってもらえれば高い信頼性を理解してもらえる」(柴垣所長)。問題はコスト競争力だが、コスト削減は容易ではない。出力が小さくても計装品などの付属設備が欠かせないためだ。

 国内では人手不足が叫ばれ、人件費削減も難しい。コストを下げるには製造期間の短縮が不可欠。毎週水曜日は午後を丸々つぶして小集団活動を展開し、無駄な作業の撲滅といったコスト削減策を現場発で練っている。
 

海外企業を開拓し、育てる取り組みも


 
 製造原価の約7割を占める素材や部品の調達コスト低減も重要。素材などを安く供給できる海外のメーカーを開拓し、品質向上に協力するなどして育て上げている。火力案件の多い東南アジアなどでは、現地メーカーと組んでヒーターや復水器を現地で製造する取り組みも進めている。

 蒸気タービンなどを製造するインド子会社も一部案件で製造コスト低減に活用。インドの工場で一部部品を作り、京浜事業所で最終的に組み立てるなどして、多くの顧客が求める「メイド・イン・ジャパン」ブランドを両立させている。
 

既存設備へのサービス事業を強化し、付加価値を提供する


 
 新設案件が停滞する中で泥沼の価格競争に巻き込まれないようにするためには、製品のライフサイクルを通じた付加価値の提供も必要だ。「初期費用が多少高くてもライフサイクルでお客さまが得をするような提案を強化したい」(柴垣所長)。IoT(モノのインターネット)を駆使した性能監視などのサービスメニュー拡充にも協力している。

 新設案件の受注拡大が難しいとなれば、運開済みの発電設備に対するサービス事業も収益拡大の鍵を握る。柴垣所長は「国内外でサービス事業を増やしていきたい」と強調。性能向上と寿命延長を目的とした部品交換や、定期検査への対応に力を注ぐ方針を示す。運転開始後に蒸気タービンのケーシングで起きる熱変形をレーザーで計測する技術など定検期間短縮に貢献する技術も開発した。
 

現場の技術力を磨く


 
 顧客の信頼を獲得するためには現場の技術力も欠かせない。「自動溶接が導入されても最後の仕上げは人間の力」(柴垣所長)となるからだ。京浜事業所には顧客から指名が舞い込む溶接士もいる。顧客の信頼が厚い技術者が客先で「ここを直すと良い」と指摘すると、「では任せた」とサービス受注につながることもある。

 技術力向上で大きな役割を果たしているのが、京浜事業所の本工場にある「モノづくり人財育成センター(未来創生館)」。2015年度に開設した。「現代の名工」に選ばれた溶接士を含め、高い技能を有する「テクノマスター」が若手に技能を伝承する場にもな
っている。

 最近の原子力建設事業で改めて浮き彫りになっているように、大規模建設事業は納期を守れなければ巨額の損失が生じる。柴垣所長は「納期通りに作る上で人間の力が大きい」と技能にこだわる理由を語る。

 

電気新聞2018年2月15日