東京電力パワーグリッド(PG)エリアで1月22日以降、大雪や寒波の影響で電力需要が急増し、2週連続で他エリアから繰り返し融通を受ける厳しい需給状況となった。ピーク時の供給を支える火力発電所のトラブル停止が要因の一つだが、背景を探ると雪による太陽光発電の出力低下、エリア内融通の可能性など、今後の教訓になりそうな点がいくつもみえてくる。足元で続くリスクへの備えはもちろんのこと、一連の事例から何を教訓とし、今後にどう生かすかが問われている。
 

デマンドレスポンスの発動数を使い切る

 
 東電PGエリアでは、1月22~26日にかけて大雪や厳しい寒さで電力需要が急増。このうち、3日間は最大電力が5100万キロワットを超えた。東電PGは22日から5日続けて厳気象対応の「電源I’(イチダッシュ)」を発動したほか、電力広域的運営推進機関(広域機関)を通じた融通が23日から4日連続で行われた。

 需給逼迫は翌週も続き、2月1、2日には再び他電力から最大263万キロワットの融通があった。電源I’として用意していた産業用需要家の需要を抑制するDR(デマンドレスポンス)は2日までに、東電PGが募集要項で指定した平日の発動数12回を使い切った。
 

火力の計画外停止と雪による太陽光発電量減少。揚水用の電源が不足

 
 東電PGにとって誤算だったのは、100万キロワット級火力の計画外停止が続いた点だ。1月22日の週は、それ以前にトラブル停止した鹿島火力発電所6号機(石油、100万キロワット)、広野火力発電所4号機(石油、100万キロワット)の不在が響いた。翌週には常陸那珂火力発電所2号機(石炭、100万キロワット)の起動が遅れた。

 もう一つの誤算は東電PGエリアで、1千万キロワット以上導入されている太陽光の発電出力が雪の影響で著しく低下したことだ。関係者は「22日の雪で太陽光が動かないことは予測していたが、翌日以降も雪が解けず、発電量が落ちることまで正確に見通せていなかった」と話す。

 実際の数値は検証を待たなければならないが、平時なら曇りでも500万~600万キロワット見込める太陽光出力が予想を超えて大幅に落ちたことにより、平日昼間に発電出力と発電電力量の両面で、揚水発電所にかかる負担が増した。

 一日を通じて需要が落ちにくい冬の特性と相まって、夜の揚水くみ上げに充てる電源が不足する悪循環に陥った。結果的に日中の需給対応だけでなく、揚水くみ上げの原資も融通に頼る綱渡りの運用を強いられた。降雪時に供給力として役割を果たせない太陽光の弱点と、供給力の変化を予想しづらい点が浮き彫りになった形だ。
 

小売事業者はどう動いたか

 
 今後の検証で注目すべきもう一つのポイントは、供給力確保義務を負った小売電気事業者がどこまで誠実に振る舞ったのかという点だ。自社電源や取引所を活用し、供給力を確保する責務を怠り、不足インバランスが大量発生していた場合、安定供給の担い手としての小売電気事業者の責任が問われる可能性もある。

 一方、経済産業省・資源エネルギー庁が1月31日の電力・ガス基本政策小委員会に提出した資料によると、1月22~26日にかけて、取引所の1時間前市場での約定量が急増したことが分かった。

 需給が厳しい局面で大量の取引を成立させる「売り玉」が市場に出たのはなぜか。複数の関係者が指摘するのが、東電エナジーパートナー(EP)が、自らの供給力確保義務を果たした上で、それを上回る予備力を市場に投入した可能性だ。

 電力・ガス取引監視等委員会は、大手電力会社の小売部門に対して、自社需要0~1%を超える電源を市場に出すよう求めている。その意味で、仮説が正しいとすると、東電EPが単純にルールに沿った行動を取ったことになる。

 しかし、いったん市場に出した玉は関東以外のエリアで約定し、電力が「流出」する可能性もある。他電力から融通を受ける厳しい状況下であればこそ、市場に出さず東電PGにエリア内で融通する道はなかったのか。その場合、どのようなルールが必要だったのかという点も含め、今後議論を呼びそうだ。

電気新聞 2018年2月6日