東京電力ホールディングスらが挑む

 
 東京電力ホールディングス(HD)の経営技術戦略研究所などが取り組んでいるドローン用無線電力伝送(WPT)システムの開発が、着実に進んでいる。ドローンは省人化・省力化ツールや災害対応としての活用が期待される一方、現場で人の手によるバッテリー交換が必要といった課題がある。こうした課題を解消するため、自動充電技術として「磁界結合」と「電界結合」の2方式でWPTシステムの開発を進めている。

 システムの開発は、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の研究開発の一環。「IoE(インターネット・オブ・エネルギー)社会のエネルギーシステム」の中で、東電HDが代表研究開発機関となって取り組む。

磁界結合方式では充電ポートを低背化し、ドローン下部のスペースを利用できるよう改良した(10月25日、相模原市)

 

送電線巡視に「磁界結合」方式

 
 WPTシステムは無人搬送車(AGV)や、近年ではスマートフォンの充電で普及している。これをドローンに搭載する場合には受電部の軽量化、さらにはドローンの稼働率を向上させるために大電力伝送が必要となる。そこで、磁界方式は受電部の重量1.4キログラム以下、受電電力750ワット以上、電界方式は重量700グラム以下で360ワット以上の電力伝送をそれぞれ目標に掲げる。
 磁界方式は東電HDの他に東芝、東芝エネルギーシステムズ、プロドローンの計4社で開発。主に送電線の巡視での活用を想定する。従来、高さ27センチメートルのピラミッド型の充電ポートを使用していたが、高さを8センチメートルへと低背化することでドローン下部のスペースを利用できるよう改良。ポートの四方に着陸支援リムを設置し、自動着陸時にドローンの位置ずれを生じにくくするよう工夫を凝らした。
 

変電所監視に「電解結合」方式

 
 主に変電所の巡視・監視への利用を想定する電界方式は、東電HD、豊橋技術科学大学、デンソーの3者で取り組む。ドローンポートに搭載されている送電電極に、ドローンの脚部に設置した薄型・軽量の受電電極が触れると充電を開始。水平方向の自由度が大きく、着陸時の位置ずれに強いのが特長だ。高周波利用設備許可も取得済み。今年度の実証は、ドローン格納庫への組み込みを追加した。

 SIP第2期は、今年度で最終年度を迎える。現状、両方式とも受電部の重量、受電電力の目標値はおおむねクリアした。引き続き使用環境を想定した実証を行い、ユーザーの声やドローンの開発動向を踏まえながら改良開発を進め、電力インフラ設備の点検に活用していく考えだ。

 経営技術戦略研究所の渡部明氏は「日本社会は今後、人口減少や高齢化により、電力インフラ設備などのメンテナンス要員の減少や高齢化が進む。現場で苦労している方々の一助となるツールとして活用できるものを提供したい」と期待を込める。

電気新聞2022年11月7日