三菱重工と電力4社が開発を目指す革新軽水炉「SRZ-1200」

 

型名は「SRZ―1200」

 
 三菱重工業は29日、120万キロワット級の革新軽水炉を、PWR(加圧水型軽水炉)を保有する北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力と共同開発すると発表した。基本仕様の設定などの基本設計を行う。新規制基準を踏まえた安全性の高さが特徴で、2030年代の市場投入を目指す。政府は次世代革新炉を新設する方針を打ち出しており、民間側でも動きが活性化し始めた。

 革新軽水炉の型名を「SRZ―1200」とした。安全性やゼロカーボンなどプラントの特徴を表す英単語の頭文字から名付けた。

 PWRの技術をベースに、自然災害やテロへの対策を講じて信頼性を高める。建屋を岩盤に埋め込み耐震性を向上させるほか、建屋の水密化などで津波耐性を強化。大型航空機の衝突に耐えられるよう格納容器外部遮蔽壁を強化し、サイバーセキュリティーも高度化する。特定重大事故等対処施設(特重施設)の機能を備えた設計となっている。

 万が一、炉心溶融が起こっても、原子炉容器の下に設置したコアキャッチャーで受け止め、溶融デブリを格納容器内で確実に冷却。三菱重工が独自開発したシステムを採用し、放射性物質の放出を防止する。

 再生可能エネルギーと共存するため運用性能も向上させる。1日単位の電力需要変化に合わせた出力調整運転である「日負荷追従運転」に対応できるようにする。ベースロード電源としての役割に加え、出力調整によって系統安定化にも貢献できる。余剰電力と、主蒸気の一部を抽気して熱源に利用し、水素製造も視野に入れる。

 三菱重工と電力4社は基本設計を手掛ける。要素技術の実証やプラント・システムの設計など、各プラントで共通の部分を設計する。具体的に建設地点が決まれば個別に詳細設計を行う。

 「ゼロカーボンビジョン2050」で新増設やリプレースの方針を打ち出している関電は「これまでも安全性や経済性を向上させた次世代軽水炉の設計を検討しており、三菱重工とも協力を進めている」とコメントし、「SRZ―1200」は候補の一つとしている。他の電力も「検討の中で得られた知見のうち、既設炉に適用可能なものがあれば反映したい」(北海道電力)、「将来にわたり原子力にかかる技術力の維持・向上を図る観点からも非常に有意義」(九州電力)などとしている。

 また、敦賀発電所3、4号機の増設計画を抱える日本原子力発電は「開発成果を注視しつつ、敦賀3、4号機の設計を進めていく」とコメントした。

 次世代革新炉には小型モジュール炉(SMR)や高速炉、高温ガス炉など様々な種類があるが、既存技術の発展型となる革新軽水炉が最も早く実用化する見通しだ。

 規制対応や、既存サプライチェーンを活用できる観点からも有望視されており、政府の有識者会合でも革新軽水炉の開発への議論が具体的に進んでいる。

電気新聞2022年9月30日