日本卸電力取引所(JEPX)は、1~2年後をめどに非化石証書の全量トラッキング(追跡)を実現する方針だ。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使い、非化石価値取引市場で取引される全ての非化石証書に電源や産地などの属性情報をひも付ける。企業の環境意識が高まる中、非化石証書の属性情報を取得する手続きを簡素化し、情報開示を後押しする。

 非化石証書のトラッキングは、経済産業省の実証実験を経て8月に事業化された。2022年度分の証書取引が始まるタイミングで、取引所を運営するJEPXがトラッキング事業も一体で担う体制に移行した。


 トラッキング実務は実証と同様、BIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)に委託。JEPXのデータを連携させ、従来別々だった証書取引とトラッキングの申し込みサイトを一本化した。

 トラッキングは現状、希望者に対応する形を取るが、JEPXは取引システムを改修し、申し込みの有無にかかわらず全量をトラッキング可能にする方針だ。非化石証書を「RE100」などの目標達成に使うのにトラッキングは必須で、手続きの負担を軽減する。

 その実現に向けて、エネルギー企業のブロックチェーン導入を支援する国際団体「エナジー・ウェブ・ファウンデーション(EWF)」に加盟。EWFが提供する基盤技術を活用し、属性情報がひも付いた形で証書を取引できるようにする。証書に付与する情報は、電源の種類や立地市町村、設備IDなどを検討している。

 現在検討中の仕組みでは、証書の出どころとなる電源を買い手が指定できるかどうかは証書の種類によって異なる。FIT(固定価格買取制度)電源由来の証書の場合、入札時に価格と量だけでなく属性情報の希望も提示。落札価格の高い事業者から優先的に属性情報が割り当てられる。小売電気事業者が特定の電源の属性情報を得るために「再生可能エネルギー電気特定卸供給」を受ける必要はなくなる。

 一方、非FIT電源由来の証書は電源を指定できない。価格決定方式がシングルプライス・オークションで、落札価格に応じた優先順位付けができないのが理由だ。電源を指定する場合は相対取引を活用する必要がある。

電気新聞2022年9月12日