実証プラントの完成を祝って行われたテープカット。右端が関電・岩根社長、右から4人目はエネ庁の日下部長官
実証プラントの完成を祝って行われたテープカット。右端が関電・岩根社長、右から4人目はエネ庁の日下部長官

 世界で初めて、水素を燃料に市街地で熱電併給を行うシステムが12月10日、神戸市内に完成した。同システムは、安倍晋三首相が1月の施政方針演説に盛り込むなど、政府肝いりの取り組み。大林組と川崎重工業が事業主体となり、関西電力などが協力する。経済産業省・資源エネルギー庁の日下部聡長官は、同日開かれた内覧会で「自治体、企業、行政が手を取りながら頑張っていきたい」と述べた。

 同システムは1700キロワットの水素ガスタービン発電設備を備え、電気と熱、水素を総合管理するエネルギー・マネジメント・システム(EMS)で供給区域内を最適制御する。2018年1月下旬から実証運転に入り、同年2月上旬から近隣の公共施設へ試験的に供給を行う。

 水素専焼に加え、天然ガスとの混焼でも発電が可能。実証で利用する水素は岩谷産業、天然ガスは関電が供給する。供給先の電気使用量を予測し、発電する量を算定。これを基に水素と天然ガスの比率を柔軟に変え、経済性と環境性が最も高くなるように調整する。

 内覧会に出席した関電の岩根茂樹社長は、「今回のプロジェクトは、水素社会の実現に向けた重要な一歩になる。グループを挙げ、エネルギーマネジメントの評価などで協力したい」と述べた。

 内覧会には日下部長官、岩根社長に加え、神戸市の久元喜造市長、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の古川一夫理事長、川崎重工の金花芳則社長、岩谷産業の牧野明次会長ら計45人が出席した。

 関電は13年度、神戸市からの依頼に応え、水素コージェネレーションシステム(CGS)を活用したスマートコミュニティー構築に関する事業性評価を、大林組などと実施。事業採算性が立ったことから、NEDOの助成事業に採択され、今回の実証事業が実現した。

 また、関電は水素利用に関する経済性や環境性の評価、スマートコミュニティーについての豊富な知見を保有している。今回の事業では、熱電併給システムやEMSの運用評価などに協力する。



電気新聞2017年12月12日