夜間作業、接続延期など、一般送配電は対応に苦慮

 
 2050年のカーボンニュートラルを見据え、国が再生可能エネルギーの導入拡大を推し進める一方で、系統運用を担う一般送配電事業者が対応に苦慮するケースが目立ってきた。再エネ発電事業者との停止交渉がうまくいかず、夜間や無停電の作業を余儀なくされたり、発電設備の工期の繰り延べで、系統接続工事のためにせっかく用意した施工力が無駄になったりしているためだ。一般送配電事業者は国に事業規律の適正化を求めた。(稻本 登史彦)

 経済産業省は、再エネの導入が広がる中で顕在化する地域とのコミュニケーション不足や、土地開発に伴う環境面への影響など、課題を整理する検討会を4月に設置。近く取りまとめを行う。

 論点の一つに挙がったのは事業規律の問題だ。日々の系統運用では特に作業停止が難しくなっていて、一般送配電事業者にしわ寄せが来ている。発電事業者は、一般送配電事業者の求めに応じるよう託送供給約款などで取り決められているものの、強制的に停止はできない。とりわけ太陽光発電事業者の協力が得られず、停止交渉が難航するケースがあるという。
 

コストも膨らむ

 
 必然的に夜間作業や無停電での工事を強いられる。安全確保のため投光器など追加の機材を準備したり、人件費が増えたりすることで全体の工事コストは膨らむ。送配電網協議会は再エネ発電事業者の理解を促すため、作業停止における不適切事例を指針などであらかじめ定めるよう経産省に要望した。

 「発電事業者の本気度・確度は我々には分からない世界。非常に難しいところだ」。6月の検討会では事業者へのヒアリングが行われ、出席した送配協の菅弘史郎・工務部長はこう指摘した。再エネ発電設備の工期繰り延べが相次いでいることが背景にある。

 一般送配電事業者としては系統接続の申し込みを受ければ、応じる方向で検討せざるを得ない。計画変更も民間同士の契約上、起こり得ることだ。ただ、施工力には限りがあり、計画変更が重なると一般送配電事業者、施工会社にとって重い負担となる。

 送配協では19~21年度に実施済みか、22年4月時点で実施中の計800件を対象に系統接続工事の工期変更の実態を調査した。それによると、一般送配電事業者による工期変更が31件だったのに対し、再エネ事業者側の都合によるものは473件と突出している。事業用地の未取得や負担金の未払い、スペック・出力変更などが主な要因だ。
 

急な変更難しく

 
 一般送配電事業者は基幹系統の大規模工事になれば、10年以上先を見据えて施工力を調整することも珍しくない。鉄塔を数基建設する比較的小規模な工事でも、2~3年前には現場調査や用地交渉を始める必要があり、発電側の急な工期変更には対応が難しい。

 繰り延べになった場合は、一般送配電事業者の設備改修工事を調整の“のり代”とするが、高経年設備の更新が進まなくなるといった弊害が生じる。今後レベニューキャップ制度の開始や、国が主導する広域系統整備も控えており、より調整の困難さは増すとみられる。

 電力広域的運営推進機関(広域機関)によると、21年度末時点の系統接続量(推定値)は太陽光が約6541万キロワット、風力が約469万キロワット。今後10年間でそれぞれ1.4倍、3.4倍に増加する見通しだ。導入量が増えれば、その分ひずみも広がる。

 菅氏は「再エネ発電事業者の増加で課題が顕在化しており、さらなる導入拡大によって今後新たな問題が生じる恐れもある。一般送配電事業者が再エネの拡大に貢献するためにも、国レベルで事業規律の適正化に向けた議論を深めることが重要だ」と訴える。

電気新聞2022年7月21日