EUタクソノミー、欧州議会が天然ガスも承認

 
 欧州連合(EU)の欧州議会は6日、持続可能な活動の分類「EUタクソノミー」に原子力と天然ガスを含めるとした欧州委員会の法令案を承認すると決定した。EU理事会で異議が出されなければ、2023年からEU域内で適用される。持続可能(サステナブル)と位置付けられたことで、原子力発電、ガス火力などへの投資を呼び込みやすくなることが期待される。

 EUタクソノミーは、持続可能な経済活動を分類する制度。施行後、EU域内の企業や金融機関は、持続可能とされた事業や商品の売上高に占める割合などを開示するよう求められる。欧州委は2月、原子力と天然ガスを条件付きでEUタクソノミーに追加する法案を提示。欧州議会、理事会に審議の場が移された中、6月14日には欧州議会の経済委員会、環境委員会合同会合が同法案を拒否する決議を採択。6日の本会議で、決議への賛否が採決された。

 法案の否決には、議会全体の過半数353票が必要。6日の採決では法案否決への支持が278票、反対が328票、棄権が33票で、法案の承認が決定した。理事会での異議申し立てには、議会より多くの国が必要なため、このまま法令として決定する見通しが高いといえそうだ。

 原子力発電追加の是非を巡り、フランスや東欧を中心とした原子力推進国と、ドイツ、オーストリアなどの脱原子力国の対立が伝えられていた。日本エネルギー経済研究所環境ユニット気候変動グループの清水透主任研究員は、エネルギー安全保障と気候変動問題への対応を両立させるため「最後は現実的な判断に至った」と話す。ロシアのウクライナ侵攻などエネルギー情勢変化を受け「欧州の中道派が原子力と天然ガスを含める法案に賛成したのだろう」と推測している。

 欧州議会の決定に対し、原子力産業界からは歓迎の声が上がった。世界原子力協会(WNA)は6日、「金融界に対し、原子力に対する明確な推奨を示している。欧州議会は科学的知見に耳を傾け、原子力への持続可能な投資が、(温室効果ガス排出)実質ゼロに役立つことを認識した」などとする声明を出した。
電気新聞2022年7月8日