産業保安関係束ね法が可決、成立した参院本会議(15日、国会)

 電力など産業保安規制体系を抜本的に見直す束ね法が15日、参議院本会議で可決、成立した。スマート保安を駆使し、自立的に高度な保安を確保できる事業者を国が認定。安全確保を前提に事業者による煩雑な手続きや検査などを見直し、人材不足に対応する。一方、既設を含む小規模再生可能エネルギー発電設備は、新たな保安上のリスク分野と位置付け、技術基準への適合維持義務や、基礎情報の届け出・使用前の自己確認などの対象とする。
 

 
 一部を除き公布から1年6カ月以内に施行される。電力などの産業保安分野は、熟練層が大量退職する一方、若年層の雇用が難しくなっており人材枯渇が懸念されている。この問題に、新技術を駆使したスマート保安の推進で対処する。

 現行の産業保安規制体系は、事業者の保安レベルにかかわらず画一的な個別規制、膨大な許可・届け出などの義務、検査の在り方に制約があった。今回の法改正では、国がスマート保安を駆使した高度な事業者を認定し、届け出、審査省略などの措置を講じる。限られた人的リソースを適切に配分するとともに、個々の事業者の保安レベル向上にもつなげる。

 一方、10キロワット以上50キロワット未満の太陽光、20キロワット未満の風力は「小規模事業用電気工作物」に位置付け、基礎情報の届け出制度などを導入。レジリエンス(強靱性)向上に向け、一般ガス導管事業者に対し、電力と同様に災害時連携計画の作成を義務付ける。

 また、2050年カーボンニュートラルに向け、風力発電について、国による技術基準適合性の確認に代えて、民間の「登録適合性確認機関」が技術基準の適合性を確認する制度を設ける。高圧ガス保安法と道路運送車両法が適用される燃料電池車(FCV)について、高圧ガス保安法の適用を除外し、道路運送車両法に規制を一元化する。

 束ね法は4月下旬に国会審議入り。5月12日に衆院を通過したが、参院経済産業委員会の質疑で、法案の元となった審議会資料の記載ミスなどが発覚。審議が長期中断したものの、会期ギリギリでどうにか成立に至った。

電気新聞2022年6月16日