電力需給逼迫から始まった1年だった。競争を促し電気料金を抑制するという趣旨で電力システム改革は進み、小売り事業への参入者は増加したものの、燃料価格高騰に伴う調達価格の上げ圧力に耐えられない事業者は、経営破綻や事業縮小に追い込まれた。脱炭素の流れを加速させる年でもあった。2050年カーボンニュートラルを射程に入れた第6次エネルギー基本計画の閣議決定、気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)などを背景に、この動きはさらに大きなうねりになりそうだ。政界では自民党総裁選で核燃料サイクルを含む原子力政策の在り方が争点化。サイクルの重要性を訴えた岸田文雄氏が総裁選を制し、その後の衆院選でも勝利した。東日本大震災から10年。「復興五輪」を理念とする東京五輪・パラリンピックでは電気事業者が安定供給の使命を果たし、大会の成功を支えた。

 

需給逼迫

 年初は全国各地で電力需給が逼迫した。寒波と共に電力需要が急増し、LNG(液化天然ガス)をはじめ火力燃料の在庫が急減。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格は過去最高値を更新した。写真は多くのエリアで90%台の高い使用率(需要ピーク時)を示した1月8日のでんき予報
 

震災から10年

 東日本大震災の発生から3月11日で10年を迎えた。被災地をはじめ各地では、追悼式などの関連行事が行われた。仙台市中心部のランドマーク「仙台トラストシティ」では11日夜、特殊照明で天に向かって強い光を延ばすライトアップ企画「3・11希望の光」を実施=写真。東北電力グループを含む県内企業44社が協力し、空高く突き抜けるような「光の道」を演出した
 

飛騨信濃FC運用開始

 東京―中部間に建設された「飛騨信濃周波数変換設備(FC)」が3月31日に運用を開始した。中部電力パワーグリッド(PG)が、岐阜県高山市内に容量90万㌔㍗の飛騨変換所=写真=を新設。東京電力パワーグリッド(PG)は既存の新信濃変電所(長野県朝日村)に交直変換設備を増設、飛騨と新信濃を結ぶ飛騨信濃直流幹線の建設を担った
 

海洋放出を決定

 政府は4月13日、東京電力福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)処理水について、海洋放出方式を採用すると決定した。同日、梶山弘志経済産業相(右手前=当時)が福島県の内堀雅雄知事らを訪問。梶山経産相は「安全性を確保し、徹底的な風評対策を行うことを大前提に海洋放出する方針とした」と報告した(福島県庁)
 

新たな100年に対応

 日本電気協会(高橋宏明会長)は10月14日、創立100周年を迎えた。6月15日には第100回社員総会を東京都千代田区の帝国ホテル東京で開催。高橋会長は開会のあいさつで、感謝の意を示し、「新たな100年にも社会の変化に着実に対応しながら、電力の安定供給と電気の安全確保、電気事業の健全な発展に貢献していきたい」と訴えた
 

40年超運転

 福井県の杉本達治知事は4月の定例記者会見で、関西電力の原子力発電所の40年超運転に同意する意向を示した。これを受け、関西電力は5月に美浜発電所3号機の燃料装荷を開始。6月29日に調整運転を開始し、並列した。約10年ぶりの送電再開となった。新規制基準施行後、国内で初めての40年超運転。関西電力送配電の中央給電指令所では美浜3号機の出力が表示された(6月29日、大阪市=セキュリティーの観点から写真を一部加工)
 

職域接種

 新型コロナウイルスワクチンの接種を円滑に進めるため、企業や大学などにおいて職域単位で接種を進める、職域接種が行われた。電力関連産業からも多くの企業が参画し、協力した。写真は福岡市の九州電力本店で行われたワクチンの職域接種(7月12日)
 

第6次エネルギー基本計画

 政府は10月22日、第6次エネルギー基本計画を閣議決定した。2050年カーボンニュートラル実現に向けた政策の方向性を示すとともに、日本のエネルギー需給構造が抱える課題を整理。気候変動対策を進めながら、安定供給やコスト低減を達成することが、いかに困難か浮き彫りとなった。写真は第6次計画の素案が提示された基本政策分科会(7月21日、東京・霞が関)
 

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