カナダの電力会社、ブルース・パワーが、原子力発電事業を資金使途とするグリーンボンド(環境債)を起債した。発行額は5億カナダドルで、調達した資金は原子力の運転寿命を延ばすための投資に振り向ける。原子力を名目とする環境債は世界初。国際的なサステナビリティ評価機関、CICERO(気候環境研究センター)は、原子力の延命化について「低炭素電力を供給するための良い方法」と評価している。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の月間レポートによると、ブルース・パワーの環境債は11月に償還期間が7年、利率が2.68%で起債。資金の使途は「安全性を維持または向上させながら運用寿命を延ばすことを目的とした部品交換、改修、保守など」と例示した。

 CICEROは3段階の中間である「ミディアムグリーン」と評価。事故のリスクや放射性廃棄物処理に懸念を示しつつ、「原子力は低炭素であり、土地利用のフットプリントも少ない」との見解を示した。延命化についても「廃炉に伴う排出物を一部回避できる」とした。

 ブルース・パワーはオンタリオ州に本拠を置く電力会社で、州の電力の3分の1を供給している。同州では原子力が水力に次ぐ安価なベースロード電源として機能。CICEROは「連邦政府は気候変動との戦いにおける原子力の本質的な価値を認めている」としている。

 これまで環境債の資金使途は再生可能エネルギーなどに限定されていた。原子力の延命化はカーボンニュートラルの流れにも合致しており、ブルース・パワーの起債は日本の動向にも影響を与えそうだ。

電気新聞2021年12月10日