22日に受け渡す日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が、東日本エリアで80円00銭を記録した。インバランス料金の上限に張り付いた形だ。曇天による太陽光発電の稼働減や、燃料高を背景とするブロック入札の影響とみられる。短期的に改善する要素は少なく、インバランス料金の上限引き上げが求められる。

 システムプライスは24時間平均で30円62銭、昼間平均で39円66銭、ピーク平均で41円07銭となり、いずれも今年度最高値を更新した。エリアプライスは東高西低。24時間平均で東京エリアは41円09銭、関西エリアは32円07銭だった。

 実勢最高値の80円00銭は、午前9時半~正午に東日本エリア、正午~午後1時に東北・東京エリアで記録した。この時間帯は西日本エリアでも最高78円80銭をつけており、全国で売買需給が逼迫した。経済産業省は7月から、2021年度のインバランス料金の上限を80円に設定しており、それがスポット価格の実質的な上限になっている。

 現在のスポット市場は、価格の上げ圧力が強い。電源の定期点検や燃料制約によって供給力が手薄である上に、燃料高を背景に売り入札価格も上昇している。さらに、22日受け渡し分は全国的に曇天が見込まれ、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)太陽光由来の売り入札量が大幅に減少したもようだ。

 価格高騰をもたらす要素はもう一つある。複数コマをまとめて入札するブロック入札だ。市場関係者は「特に買いブロック入札が増えているのではないか」と指摘する。今冬の需給逼迫が懸念される中、輸入価格が高騰するLNG(液化天然ガス)を“温存”するため、自社火力の稼働を減らしてスポット調達に差し替える動機は強まっている。

 スポット価格が実質的な上限に張り付いた以上、今後は上限の引き上げが求められる。英国でスポット市場を運営する欧州エネルギー取引所(EEX)は9月、天然ガス在庫不足と弱風によってスポット価格が最高2.3ポンド(約350円)をつけた際、上限を従来の3ポンドから6ポンドに引き上げる対応を取っている。

電気新聞2021年11月24日