東芝はフィルム型のペロブスカイト太陽電池で、世界最高のエネルギー変換効率15.1%を達成した。独自の成膜技術を開発し、広く普及しているシリコン型太陽電池並みの変換効率を実現。東芝は2025年までに、変換効率が20%以上で、受光部の面積が9平方メートルのペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて研究開発を続ける。発電コストは1キロワット時当たり20円以下を目指す。
開発中のペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があり、オフィスビルの壁や強度の低い屋根などに設置できる。太陽光導入のボトルネックとなっていた適地減少の解決策として期待される。
東芝は18年6月に変換効率が14.1%で、受光部面積が7.03平方メートルのペロブスカイト太陽電池を開発した。ヨウ化鉛の膜にヨウ化メチルアンモニウムの膜を重ねて作るが、化学反応の制御が難しいという課題があった。膜が不均一になりがちで、変換効率が上がらなかった。
そこで、ヨウ化鉛とヨウ化メチルアンモニウムを混ぜた独自のインクと製造装置を開発し、均一な膜の形成に成功。その結果、電流値が上昇し、従来品に比べて変換効率が1ポイント向上した。インクを塗る速度も、量産化に必要とされる1分当たり6メートルを確保した。
今回の研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「太陽光発電主力電源化推進技術開発」の一環。研究成果の詳細は、きょう10日にオンラインで開かれる「第82回応用物理学会秋季学術講演会」で発表する。
経済産業省はペロブスカイト型を次世代太陽電池の本命と位置付け、30年度までに1キロワット時当たり14円以下の発電コストを達成する開発目標を示している。総額2兆円のグリーンイノベーション基金事業でも最大498億円を充てる方針。今後も産官学の研究開発が活発化しそうだ。
電気新聞2021年9月10日
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