原子力機構の高温工学試験研究炉「HTTR」制御室。制御棒の引き抜き操作が行われ、運転を再開した(7月30日、茨城県大洗町)

 日本原子力研究開発機構は30日、高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町)の運転を再開した。午前11時5分に制御棒の引き抜き操作を開始。2011年1月以来の運転となり、午後2時40分に臨界に到達した。今後は原子炉の運転を伴う定期事業者検査を実施する。原子炉の性能確認後、10月にいったん停止。22年1月頃から再稼働し、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)のプロジェクトであるLOFC(炉心強制冷却喪失)安全性実証試験を実施する見込み。

 HTTRは11年2月に定期検査のため運転を停止。14年に原子炉設置変更許可を原子力規制委員会に申請し、20年に許可を取得した。これまで安全対策工事を6月10日に、使用前事業者検査を7月2日に完了させた。

 LOFC試験は10年度に第1段階として、熱出力30%、ガス循環機が停止した状態で自然に原子炉が低出力で安定的に冷却できることを確認している。第2段階として、熱出力100%、ガス循環機停止の状態で実証する予定だ。

 HTTRの運転再開に関連し、萩生田光一文部科学相は30日の閣議後会見で、「カーボンフリー水素製造の実証に向けた研究開発を着実に進めて頂きたい」と述べた。その上で「高温ガス炉は安全性で優れ、高効率発電や水素製造過程の熱源として利用可能なことから、50年カーボンニュートラル実現への貢献が期待される」と説明。安全確保に万全を期した上で研究開発を進展させるよう求めた。

電気新聞2021年8月2日