産業構造審議会(経済産業相の諮問機関)の産業保安基本制度小委員会(委員長=若尾真治・早稲田大学教授)は2日、産業保安の環境変化を踏まえた規制体系の方向性について、検討結果を取りまとめた。現行の画一的規制を改め、リスクに応じて規制の強度を変更するとともに、スマート保安を推進する。再生可能エネルギー主力電源化をにらみ、保安業務の外部委託推進も盛り込んだ。今後、経産省が規制見直しの具体化に向けた作業を検討する。

 産業保安分野を取り巻く環境は大きく変化している。人口減少や産業構造変化、ドローンなどテクノロジーの革新的進展、保安人材の枯渇に加え、電力分野では再生可能エネの大量導入などに直面する。小委は今年2月に新設され、産業保安に関する規制体系の在り方などを横断的に検討してきた。

 現行の産業保安規制体系では、基本的に全ての事業者が画一的な大量の許可・届出、検査の手続を求められており、この改善を柱とする。事業者の能力など、リスクに応じて規制の強度を変える柔軟な制度体系とすることで、行政側のリソースの有効活用にもつなげる。

 例えば、スマート保安を駆使して自立的に高度な保安を確保できる事業者に対し、個別の許可・届出を求めるのではなく、記録保存義務などを課す。行政がチェックできる形を担保した上で、自己管理型の保安への移行を目指す。

 また、再生可能エネなどの導入拡大を見据え、保安の業務委託拡大に大きく舵を切る。自家用の大型火力や大規模再生可能エネルギー設備について、保安管理業務の委託を可能とすることで、保安水準の確保や専門人材を効率的に活用。また、小規模太陽光は、行政が一定の基礎情報を収集・把握する仕組みを構築。その上で保安業務の委託を通じて、保安水準を向上する新たなスキームを導入する。

電気新聞2021年6月3日