地球環境産業技術研究機構(RITE)は、2050年カーボンニュートラルに向けたシナリオ分析を、13日の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会で説明した。再生可能エネルギー54%、原子力10%、残りを水素・アンモニア、CCUS(二酸化炭素回収・貯留・利用)火力とする電源構成の場合、電力コストが現状の2倍以上に上昇する可能性を指摘。その上でイノベーションの不確実性を踏まえ、再生可能エネ、原子力といった確立した技術が重要だとした。

 同分科会は1月、次期エネルギー基本計画への反映を見据え、50年実質ゼロに向けた複数シナリオの分析に着手することで合意していた。事務局が参考値として示していた50年の電源構成(再生可能エネ50~60%、原子力・二酸化炭素回収火力30~40%、水素・アンモニア発電10%程度)のほか、再生可能エネを100%とした場合、原子力を20%維持した場合など多様なシナリオが対象。作業をRITEに委託し、結果を待つ間、30年に向けた検討を進めていた。

 こうした分析結果は定量的に示されるが、前提条件を変えれば異なる結果となる。将来の不確実性を踏まえ、課題や制約を認識するとともに、それらを乗り越える具体策などの検討に生かす。30年の電源構成などとは異なり、50年目標は不確実要素がある。あらゆるシナリオを想定した上で、目指すべき方向性として位置付ける。

 産業競争力の観点から、電力コスト上昇に懸念を示す声が委員から出た。豊田正和・日本エネルギー経済研究所理事長は「極めて衝撃的と言わざるを得ない。今でも高い電気代が倍になれば、製造業に日本から出て行けと言っているようなものだ」と述べ、相対的にコストが低い原子力について、新増設を含む最大限の活用を訴えた。田辺新一・早稲田大学教授は「(日本の)ものづくりをどうするか、いま一度考える必要がある」とした。

電気新聞2021年5月14日