中東や東南アジアでの受注を目指す(ニュースケール社のSMRを採用した発電所の完成予想図)

 日揮ホールディングス(HD)は、中東や東南アジアで小型モジュール炉(SMR)を採用した発電所の受注を目指す。日揮はこれらの地域で石油・LNG(液化天然ガス)プラントを数多く手掛けており、多くの下請け業者を抱える。SMR事業の売り上げ目標は明らかにしていないが、2040年度までにエネルギー部門の収益の柱に育てたい考えだ。

 日揮HDは放射性廃棄物や再処理施設のEPC(設計・調達・建設)を日本国内で手掛けてきたが、原子力発電所の建設実績はない。中東地域では過去に日立製作所と共同でアラブ首長国連邦(UAE)の原子力建設プロジェクトに入札したが、韓国勢に敗れた。

 日揮HDは4月、SMR事業に参画すると発表。SMRメーカーの米ニュースケール・パワーに4千万ドル(約48億円)を出資することも決めた。

 初案件は米国アイダホ州に出力7万7千キロワットのニュースケール社製SMRを10基前後建設するプロジェクトになる見通し。25年に初号機の着工、29年の運転開始を予定する。

 この案件は米エンジニアリング大手のフルアと共同でEPCを手掛けるが、米国内の下請け業者と関係の深いフルアが主導する見込み。日揮グループで海外のEPC業務を担う日揮グローバルの木村靖治理事・原子力エネルギー部長は「今後5年間は、フルアとのプロジェクトを通じてノウハウを蓄える。中東や東南アジアでは当社が中心となり、EPCを遂行したい」との考えを示す。

 日揮HDが12日公表した中長期経営方針「2040年ビジョン」では、SMRをエネルギー部門の中核事業領域に位置付けた。洋上風力発電、水素・燃料アンモニアとともにクリーンエネルギー技術と捉え、事業展開を通じて脱炭素化ニーズに応える。

電気新聞2021年5月17日