触媒電極を積層したCO2の分離装置

 東芝は、二酸化炭素(CO2)を化学品の原料となる一酸化炭素(CO)に分離する技術で、従来比60倍の処理速度を達成した。分離に用いる触媒電極を大型化するとともに、4枚の触媒電極を積層する技術を開発。実証装置はCO2を年間1トン程度処理できるという。東芝は触媒電極の面積拡大に取り組み、2020年代後半の実用化を目指す。CO2を排出するごみ処理工場や火力発電所への適用を視野に入れる。

 東芝は2019年に独自の触媒電極を用いたCO2の分離技術を開発した。CO2を気体のまま直接分離する電極で当時も世界最高レベルの処理速度を達成したが、分離量の増加に向けて触媒電極を大型化した。

 触媒電極は19年時点では4平方センチメートルの大きさだったが、広い面積でも触媒層を均一に仕上げる技術を確立。今回100平方センチメートルまで大型化し、安定的にCOを生産できた。

 触媒電極の積層化にも成功した。電極は積み重ねると熱がこもり、分離速度が落ちる課題があった。電極と電極の間に冷却部を設けたことで積層時も安定してCO2を分離できるようにした。

 COは水素との合成によりメタノールやエタノールを作り出せる。コバルト触媒などを用いればディーゼル燃料も生成できる。

 CO2の分離は温室効果ガスの排出抑制と燃料生成の両面で、実用化が期待されている。

 この技術は、環境省の「人工光合成技術を活用した二酸化炭素の資源化モデル事業」で開発した。触媒電極を4枚積層した実証装置は、幅23センチ、奥行き13センチ、高さ23センチメートル。東芝は引き続きCO2の処理速度の向上などに取り組み、早期の実用化を目指す。

電気新聞2021年3月22日