経済産業省は、電気保安分野のスマート化に向けたアクションプラン案をまとめた。当面は2025年をターゲットに、新しい保安モデル創出に向けた規制見直しや、人材育成などを官民共同で推進する。まずはドローンでの外観点検など、確立した要素技術を確実に普及させる方針。スマート技術を活用する発電所などを増やし、事故予兆の早期発見や電気設備起因の事故低減を目指す。

 アクションプランでは25年をターゲットに、スマート保安実現に向けた官民に必要な行動を整理した。16日、スマート保安官民協議会に設置した非公開の電力安全部会で、正式に取りまとめる。

 対象となる火力、水力、風力、太陽光などの発電設備や送変電設備は、ほとんどが設備の経年劣化、保安人材不足などの課題に直面している。スマート保安を実現すれば、センサーによる常時監視や遠隔監視で、労働集約的だった現場作業が合理化される。また、人工知能(AI)などを活用すれば、これまで暗黙知だった判断内容の形式知化なども期待できる。システム化できる部分はアウトソースし、“人と先端技術の融合”を目指す。

 アクションプランには、各設備について25年の絵姿を記載。例えば、火力ではセンサーやドローンによる常時遠隔監視や点検省力化で、保安力向上を図りつつ一層の合理化を目指すとした。加えて、状態監視技術などを活用した点検時期の最適化など、現在確立していない技術の開発も促進する。

 経産省は、スマート化に対応した規制の見直しなどを順次進める。一方、民間には、省力化と保安水準の維持・向上の両立について、技術実証による明確化や費用対効果の確認が必要になるほか、人材育成などが求められる。今後は、製品評価技術基盤機構(NITE)を事務局とする電気分野の「スマート保安プロモーション委員会」を立ち上げ、スマート技術を活用した新たな保安手法について、妥当性の確認や関係者間の共有を進める。

電気新聞2021年3月16日