FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)賦課金の一般家庭(世帯当たり)の年間負担が、2021年度には1万円を超える見通しとなった。調達価格の低減は進んでいるが、再生可能エネを主力電源と位置付けて大量導入を目指す以上、負担の軽減が始まるのは当面先となる見込みだ。FIT開始当初に認定された高額な調達価格の買取期間もまだ半分以上残っている。政府が進めるカーボンニュートラルの実現に向けて、国民の覚悟が問われている。

 経済産業省が24日、21年度のFIT賦課金単価を3・36円に決定した。過去の発電実績などをもとに、FIT電源の販売電力量を予測し、賦課金単価を計算した。月260キロワット時の電気を使用する標準的な家庭で、年1万476円の賦課金負担となる計算だ。
 
再生エネ3.1倍に
 
 日本はFITで再生可能エネの普及を急拡大させた。2010年度の電源構成で再生可能エネ比率は9%だったが、19年度は18%と倍増。12年から18年の再生可能エネ発電電力量の伸びは3・1倍と、世界でトップクラスを誇る。環境政策に注力する欧州連合(EU)は1・6倍にとどまる。FIT既認定分が順調に稼働すれば、エネルギーミックス(30年度の電源構成)で掲げた22~24%を達成できる見通しも出てきている。

 導入が進んだ一方、国民負担の増加率は、政府想定を上回る公算が大きくなっている。現行のペースで30年に22~24%を達成した場合、買取総額は3兆9千億~4兆4千億円となる想定だ。エネルギーミックス策定時は4兆円までに収める計画だった。21年度の買取総額は3兆8千億円となる見通し。このうち、約6割の2兆2千億円を12~14年度に認定された事業用太陽光が占めており、「根雪のようにのしかかっている」(経産省)という状況がまだ続く。
 
割高な洋上風力
 
 12~14年度の太陽光の買取期間が終わる2030年代前半に、負担が軽減し始める可能性はある。22年から始まるFIP(フィード・イン・プレミアム)にも、再生可能エネの自立化を促す効果が期待される。ただ、官民が協調して産業化を目指す洋上風力は、これから割高な調達価格で導入し始める。

 経産省は50年の電源構成議論で再生可能エネ比率を50~60%とする参考値を示している。調達価格の下落は国民負担の上昇ペースをなだらかにするが、導入量を増やせば相殺する形となり、経産省は発電コストの低減動向もにらみながら難しい舵取りが求められる。

 政府は環境と経済の好循環を掲げて脱炭素社会を目指すが、移行期に国民負担の高まりは避けられない。標準家庭のFIT賦課金が年1万円を超えたことで、あらためて賦課金に関心が寄せられる可能性がある。官民が一丸となって負担の抑制に尽力するのは当然不可欠だが、国民にも脱炭素社会に向けた覚悟が求められる。

電気新聞2021年3月26日