3E+S達成へ、原子力政策の見直しを働きかける考えを示す古川委員長

 関西経済連合会(会長=松本正義・住友電気工業会長)など西日本の6経済連合会は9日、エネルギー基本計画の見直しに向けた意見を発表した。グリーン成長と脱炭素の両立を求めることが柱。エネルギー自給率向上の観点から、準国産エネの原子力について、現行の「依存度低減」方針を見直すことを提言。さらに、コストの視点の重要性を強調。エネルギーミックス(2030年時点の電源構成)は現行目標の堅持を訴える。イノベーションで世界をリードすることを目的に、政府の支援強化も求めた。

 関経連はこれまで同基本計画の改定議論に合わせて提言を取りまとめて関係機関へ提出・公表してきた。今回は、福井県原子力発電所所在市町協議会(会長=中塚寛・福井県おおい町長)との対話内容なども踏まえ、地球環境・エネルギー委員会(委員長=古川実・日立造船相談役)を中心に議論。世界的な脱炭素潮流の加速やコロナ禍からの回復といった課題が重なる時期であることから、九州、四国、中国、中部、北陸の各経済団体と認識を共有し、初の連名での提言が実現した。

 提言では、日本を取り巻く経済環境を踏まえ、3E+Sについて「安定供給と経済効率性の重要性は高まっている」と強調。エネミックスは現行目標の達成に傾注すべきだとの考えを示した。特に、鍵となる既存原子力について国民理解を促進し再稼働を加速するとともに、米国の事例をもとに運転期間延長制度の見直しを提案した。さらに、「依存度低減」方針を見直し、新増設方針を明確化することを求める。

 石炭火力は、今冬の電力需給逼迫も踏まえ役割を評価。性急な脱石炭に慎重な見方を示し、「原子力再稼働を加速することで代替すべき」だとした。再生可能エネは、経済性を踏まえ、大幅な積み上げによる温室効果ガス削減目標の引き上げは「厳に避けるべき」と強くくぎを刺した。一方で、立地制約の克服へ向けた規制緩和を提言。定量的なコスト低減目標を設定し、達成困難なら「主力電源化」を柔軟に見直すべきだとした。

 政府は、脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」を創設するが、諸外国の例をもとにさらに積み増すよう提言。小型モジュール炉(SMR)など原子力も支援対象とすることを求める。提言は経済産業省など関係省庁に送付。全文をウェブなどで公開する。古川委員長は、緊急事態が終了次第、速やかに同提言を携え、再稼働加速などを政府へ提言する考えを示した。

電気新聞2021年3月10日