総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は24日、2030年に向けたエネルギー政策の議論を始めた。まずは経団連、日本商工会議所、連合、全国消費者団体連絡会など、関係団体へのヒアリングに着手。30年のエネルギーミックスを巡る原子力の位置付けなどで意見が割れた。委員からは、アンモニアや水素などの脱炭素燃料を加えた30年の非化石比率を示すべきとの意見が聞かれた。

 基本政策分科会では昨年秋、次期エネルギー基本計画の議論に着手。50年カーボンニュートラルに向けた課題を優先して話し合い、一定程度進展したことから30年の議論に移行した。梶山弘志経産相は会議の冒頭、開催が予定される米国主催の気候変動サミットなどに触れ、「国際動向を注視しながら検討を加速する必要がある」と述べた。

 30年のエネルギー政策に関する各団体へのヒアリングでは、コスト面を意識した再生可能エネルギーの最大限導入などについておおむね一致したが、原子力については多様な意見が出た。

 経団連は「リプレース・新増設を政策方針に盛り込むことが求められる」と説明した上で、「産業基盤維持の観点から、今回のエネルギー基本計画がぎりぎりのタイミングだ。強い危機感を持っている」と強調した。連合は、中長期的な依存度低減を主張したが、安全確保や住民理解を前提に、代替エネルギー源が確保されるまでの間、活用を容認する方針を説明。その上で原子力技術者の確保・育成を求めた。また、全国消費者団体連絡会は、市民の意識調査を基に「2030年代の稼働ゼロに向けた工程計画を策定すべき」と訴えた。

 ヒアリングなどを踏まえ、橘川武郎・国際大学大学院教授は「原子力が必要だという意見が多くあったが、(アンモニアなどの)カーボンフリー火力という新しい概念が出てきた。カーボンニュートラルと原子力を結び付ける必然性はない」と訴えた。水本伸子・IHIエグゼクティブ・フェローは、30年の1次エネルギーと電源構成について、「原子力と再生可能エネに(アンモニアなどの)脱炭素化した燃料を加えた非化石比率の目標値を示してほしい」と求めた。

電気新聞2021年2月25日