日本原子力研究開発機構は4日、食品廃棄物の豚骨を利用し、ストロンチウムやカドミウムなど有害金属を回収する高性能な吸着剤を開発したと発表した。従来の吸着剤の数倍から数千倍の吸着性能を示す。重曹(炭酸ナトリウム)水溶液に豚骨を漬け込むだけで簡単に作成できる。安価で量産が可能な吸着剤として原子力施設の汚染水浄化や、鉱山周辺土壌の汚染物質除去などで実用化を目指す。

 従来、有害金属の吸着剤としてはゼオライトや酸化チタンなどがあったが、コストや供給力に課題があった。食品廃棄物である豚骨や牛骨は安価に入手でき、高い吸着性能を示すことが知られていたが詳しいメカニズムが分かっていなかった。

 今回、研究グループは骨の主成分である炭酸アパタイトに着目した。重曹水溶液で炭酸の含有量を増やすと、表面が負の電荷に帯電し、正電荷のストロンチウムを吸着しやすくなることが判明。取り込めるストロンチウムの容量も増えることも分かった。

 ストロンチウムを含む水溶液に加工した骨を入れたところ、吸着性能は既存の吸着剤であるクリノプチロライトよりも250倍ほど高い数値を示した。カドミウムについても調査し、クリノプチロライトの約370倍、モルデナイトの約3200倍と非常に高い吸着性能を確認した。

 今回開発した吸着剤は、原子力施設や鉱山周辺の環境浄化剤としての利用が考えられる。リチウムなど有用金属を回収する吸着剤としても応用を検討していく。

電気新聞2021年2月5日