組み立てを容易にした密閉型テント

 日本原子力研究開発機構は22日、原子力施設などでの放射能汚染発生時に作業員が速やかに退避できるよう、20分程度で簡単に組み立てられる密閉型テントを開発したと発表した。フレームの構造改良や材料の軽量化により、設置時間を従来の約2時間から大幅に短縮。レイアウトも設置場所に合わせて柔軟に変更できる。汚染拡大を防ぐ構造を生かし、医療施設など原子力以外の分野での利活用も期待される。

 核物質の漏えいなどで作業者の身体に汚染物質が付着した場合、部屋の出入り口などに設ける密閉型のテントで汚染検査や除染などを行う。

 従来のテントは鉄製で重量も540キログラムと重く、組み立てに時間がかかるため、退避が遅れて内部被ばくのリスクが高くなる恐れが指摘されていた。

 原子力機構は2018年頃から組み立てが容易なテントの開発に着手した。開発したテントは施設の出入り口に隣接する部屋と、汚染検査などを行う部屋の計5部屋で1セットを構成する。

 高さは2メートル、通路の幅は1・2~1・6メートル。5部屋を直列に配置した場合の1セット当たりの全長は9・2メートルとなる。

 フレームは展開・伸縮できる構造とし、これまで必要だった組み立て工具や脚立などは不要。材質はアルミ製に変え、重量を180キログラムと従来の3分の1程度に抑えている。

 テントの増結はファスナーで行う。テント同士の結合を容易にし、設置時のレイアウトに柔軟性を持たせている。
 テントとテントの組み立て方法については、製造を担当した医療・理化学機器メーカーのコクゴ(東京都千代田区、南明則社長)と共同で特許を出願しているという。

 現在は核燃料サイクル工学研究所(茨城県東海村)のプルトニウム燃料技術開発センターなどに5セットを配備している。機構内で情報を共有し、他部署で導入希望があれば対応する。

電気新聞2020年1月25日