三菱重工業は12月3日、出力30万キロワット以下の小型モジュール炉(SMR)の概念設計を完了したと発表した。蒸気発生器や加圧器などの主要機器を原子炉容器に内蔵して小型化を図る。同社は今後、詳細設計や市場調査を進めて2030年以降の実用化を目指す。

 今回設計したSMRは30万キロワット級の発電用以外にも、離島や非常用電源としての活用を想定する3万キロワット級の「船舶搭載炉」に展開する考え。電源に限らず動力や熱源としての用途も見込む。

 三菱重工はこれまで国内で24基のPWR(加圧水型軽水炉)を設計・建設してきた。小型炉については1969年に進水した原子力船「むつ」の動力炉から開発を続けている。中型炉はフランス電力(EDF)と連携し「アトメア1」を製品化。三菱重工単独でも2000年代に「一体型モジュラー軽水炉(IMR)」の開発に着手している。

 IMRは主要機器を原子炉容器内に納めた構造となっている。原子炉内の冷却材熱流動試験などを経て、開発に必要な要素技術も実証した。今回のSMRの概念設計はIMRで培った知見を応用した。

 三菱重工は11月26日に公表したエナジードメインの事業方針で、小型炉の研究開発を推進すると打ち出した。将来的には水素製造に用いる高温ガス炉やコンテナ収納型の「マイクロ炉」なども手掛ける方針だ。

電気新聞2020年12月4日