東北NW岩手支社、地域と連携し早期復旧 大船渡山林火災
前例のない山林火災の対応に当たる中でも、早期復旧を実現した

◆見えぬ全容…鎮火まだか
 2月26日から3月9日までの11日間、岩手県大船渡市で発生した山林火災。焼失面積は同市の面積の約9%に及び、平成以降の山林火災で最大となった。消防による懸命な消火活動が続く中、東北電力ネットワーク岩手支社も早く動き出し、被害を受けた設備の早期復旧を果たした。その背景には「避難したお客さまが(自宅に)いつ戻ってきてもいいように」という使命感と、地元自治体との緊密な連携があった。

 今回の山林火災で主に対応に当たったのは、同支社の大船渡電力センター。実は同センターの管轄内では2月19日から連続3回、小規模な山林火災が起こっており、その3回目が大規模災害につながった。電柱傾斜や火災の熱による高低圧線の損傷、焦げた樹木の電線への倒木、電力量計の溶解など約170カ所で設備被害があった。

 ◇対応に苦慮
 岩手支社ではまず、延焼エリアが拡大する中で二次災害を防止するため、2月21日から柱上開閉器の操作による配電線停止(保安停止)を順次行った。その規模は小学校や駅など重要施設を含む1582地点だ。

 岩手支社(配電)の飛澤克久配電専任課長と昆野吉則主査は「台風や地震などであれば、事前の備えや災害後即時の復旧対応ができる。火災は鎮火後でなければ被害規模が分からず、対応に苦慮した」と振り返る。

 2月26日以降は大船渡電力センターを中心に支社全体から巡視・復旧要員を集め、東北電力岩手支店や同社グループのユアテック、東北送配電サービスなどを加えた計161人で対応に当たった。

 3月6~9日の4日間は青森・宮城支社からの計75人の応援派遣も受けたが、「被害状況が見えない中で、どの程度の応援を要請すればいいか手探りだった」と昆野主査。前例のない対応を余儀なくされつつも、避難指示が解除された10日までにおおむね設備を復旧させた。

 早期対応の鍵は、地元自治体との連携だった。同社と東北電力は東北6県・新潟県の全自治体(264自治体)と災害時の連携協定を締結済み。大船渡市とも協力体制を確立しており、飛澤課長は「日頃から築いた関係性」が有事に機能したとの見方を示す。

 ◇元気届ける
 通常は火災の鎮圧宣言が出るまで現地に立ち入れないが、東北NWはその前から同市災害対策本部と連絡を取り合い、安全に活動できるエリアを確認。特別許可を得て5日から現地入りし、被害エリアの巡視・設備改修を行った。通電火災の可能性がある場所への個別送電の検討も含め、丁寧に確認作業を行った。

 今回の山林火災への対応について、飛澤課長は「岩手支社の復旧要員の隊長として『電気を通じて元気を届けよう』と呼び掛けていたが、特に大船渡電力センターの社員の頑張りに助けられた」と振り返る。昆野主査は「避難解除後、住民の皆さんが自宅に帰ってきた時に電気がつくという、当たり前の状態を提供したかった」と語った。

電気新聞2025年4月7日