送電線に向けてデモフライトする商用ドローン

 ドローンを活用する送電設備の巡視・点検サービスが25日、始まった。同日、東京電力パワーグリッド(PG)などが出資するグリッドスカイウェイ(GSW、東京都港区、足立浩一・代表職務執行者)が、埼玉県・秩父エリアの送電線上空に約150キロメートルのドローン航路を整備。秩父市内で開通式を開いた。実証では設備点検時間を従来比で半分以下にする成果を出しており、10年後には日本全国で4万キロメートルまで航路を広げる計画だ。

 ドローン航路は、デジタル技術を生かした社会インフラ「デジタルライフライン」整備の一環。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして研究が進み、秩父市ではGSWが航路整備に向け国土交通省などと協議してきた。ドローン航路の整備は世界初という。

 巡視・点検サービスは、GSWが送配電事業者にドローンや自動飛行システムをリースする形式となる。秩父エリアの場合は、東電PGがドローンを運転。GSWは航路管理者として、ドローンが同時間帯に同じ航路を通らないよう監視する。

 ドローンの活用は、点検の省人化と時短化に加えて、現場に入る必要がないため安全性も増す。実証では鉄塔2基の点検の場合、作業員1人で約200分で完了。一方、鉄塔まで歩いて登山し、昇塔と目視点検をする場合は作業員2人で約500分を要した。

 稼働するドローンは1回のフライトで鉄塔4基の点検が可能という。利用料金は作業員が現場に入るコストと比べ「同等以下に設定した」(足立代表)。今後、ドローン航路を4万キロメートルまで広げることについて足立代表は、「通信環境の整備が課題」と語る。既に広島県などで航路整備に動き出している。

 25日は、航空管制システムを手掛けるトラジェクトリー(東京都港区、小関賢次代表)も静岡県浜松市の天竜川上空で物流を目的としたドローン航路を設定。現地で開通式を開いた。

電気新聞2024年3月26日