需要家側の提供可能な比較的小規模なエネルギーリソースをアグリゲート(集約)し遠隔で自動制御することで、供給力や調整力等のエネルギーを必要とする者(系統運用者や小売事業者等)に提供するVPP(仮想発電所)の考え方が、盛り上がりを見せている。今回から合計4回にわたりVPPビジネスの過去・現在・未来を連載するが、初回ではVPPの成り立ちから紹介する。要約すると、欧州で始まった小規模分散再エネアグリゲートビジネスと米国で始まっていたDRアグリゲートビジネスとが融合したエネルギープラットフォームビジネスである。
図_欧州のVPPプロジェクト_4c 

ドイツ発祥のVPPは、再エネを集約し自動制御する実証事業から

 
 VPP(Virtual Power Plant=仮想発電所)とは、電力の需要家が所有し送配電網に接続されているDER(Distributed Energy Resources=分散型エネルギー資源)をネットワークで結んで集約(アグリゲート)し、仮想的な発電所に見立てて、系統運用者、電力市場、電力会社等に集約した電力(調整力・供給力等)を供給・販売するビジネスモデルである。これは分散型エネルギー資源のシェアリングエコノミーとも、異なる者同士のエネルギー過不足をマッチングさせるプラットフォーム提供ビジネスとも考えられる。

 VPPの言葉が世に登場したのは、2009年からドイツで行われたスマートグリッドプロジェクト「E―Energy」にさかのぼる。このプロジェクトでは、需要家の小規模なコージェネレーションシステム(CGS)や風力発電、太陽光発電等を集約し、全体を一括で自動制御することで、単独では応札できないエネルギー市場やエネルギーが不足する事業者に提供する実証事業であった。この成功を受け、ベンチャー企業の独ネクスト・クラフトベルゲやドイツ各地の配電線を保有し電気事業も営むシュタットベルゲなどがVPPビジネスを開始した。従って、欧州における需要家側エネルギーを集約するVPPビジネスの成り立ちとしては、まさしく小規模な分散型電源を仮想的に集約した発電所ビジネスであり、特に再生可能エネルギーのアグリゲートビジネスの意味合いが強い。
 

米国発のDR。需要削減分を発電所(供給力)としてみなす

 
 一方、過去から米国においては、旺盛な電力需要に対して供給力としての新規の発電所新増設が課題であり、経済的な理由から発電所建設と同等の供給力確保手段として、需要を削減するDR(Demand Response=デマンド・レスポンス)プログラムが民間電力会社であるデュークエナジーで始まっていた。これをDR活用ビジネスとして米国ベンチャー企業のエナノックやコンバージなどが発展させていった。すなわち、米国における需要家側エネルギーリソースを集約する取り組みは、DRアグリゲートビジネスの意味合いが強い。
 

DERとDRを含める「広義のVPP」

 
 従って、欧州型の多数の分散型電源をアグリゲートし遠隔制御することをVPPアグリゲーター、その事業をVPPビジネス、米国型の多数の需要設備をアグリゲートし遠隔制御することをDRアグリゲーター、その事業をDRビジネスと呼べばよいのであるが、ことはそう単純でない。なぜならば、需要側に設置された電源等を制御して需要量以上に削減して逆潮流させる場合、分散型電源制御の観点からはVPPであり、需要設備制御の観点からはDRとなるからである。この点については、分散型電源と逆潮流を含めて狭義のVPPと呼び、DER・DRを含めて全体を広義のVPPと呼ぶことが多い。

 なお、さらには、需要家のエネルギー設備を制御することから、需要家自身へのサービス提供までを含めて広義のVPPを活用したビジネスを、エネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB)とも呼んでいる。

図_ERAB_4c 
【用語解説】
◆DER
分散型エネルギー資源。需要家の受電点以下に接続されているエネルギーリソースと、系統に直接接続される分散型電源を総称するもの。

◆DR
需要家のエネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、需要家エネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。

電気新聞2018年5月21日

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