◆従来の計測方法とリモートセンシング
 マスト式の課題をクリア/近年の設備大型化にも対応

 

 日本は国土の70%が山岳地帯で、平地は14%程度。複雑な地形が多いため、風力発電所を開発・運用する上で大きな課題となる。風力エネルギーの変動性や発電量の予測に与える影響が大きいためだ。風力発電所の開発では、まず候補地の風況を調べる。風車のハブの高さで風況を実測する手法は、地点ごとに異なる風力を把握するには最適な方法となる。これはまた、プロジェクトの設計、投資の判断に必要となる。

 風力発電所の建設候補地では、事前の風況調査に気象観測塔や風況観測用のマストを用いる。この手法は広く認知されており、信頼度もある。ただ、課題はコスト。観測塔の設置許可申請も必要で、建設までの時間もかかる。日本のような地形が複雑なエリアでは、候補地への設置が難しいケースもある。また、風況観測用マストを使った手法では、移設や撤去が容易でないため、その候補地で投資するのは見合わないと判断された場合、風況観測設備を撤去したり移動したりする必要がある。

 以前は風車ハブ高の平均は80メートル程度だったが、ここ数十年で急速に高度化。近年ではハブ高の平均が140メートルの地域もあり、今後もこうした傾向が続くとみられる。風況観測用マストの平均の高さは一般的には60メートル程度。風車タービンの位置が上昇するにつれ、風況観測用マストの限界が問題視されるようになった。

※ヴァイサラ資料より作成

※ヴァイサラ資料より作成

 こうした課題を解決する手法がある。その方法の中で最も認知度が高いのが、リモートセンシング技術だ。風況観測用マストを超える高さの風車ハブ高で風況計測が可能になる。風力発電市場が確立された欧米では、風況観測の主流となりつつある。ただ、日本では認知されていない。

 リモートセンシングは、ドップラーレーダーのように、大気条件を計算し、ドップラー周波数シフトから風速を観測する方法だ。風力発電業界向けには、主にSoDAR(Sonic Detection And Ranging、ソーダー)と、LiDAR(Light Detection And Ranging、ライダー)がある。ソーダーは音波を、ライダーはレーザー光を使用する。ともに計測設備を移動できる。

 ライダーは、レーザー光を大気中に放射して大気からの散乱光を受信、そのドップラー周波数シフトから風速と風向を観測する。リモートセンシングシステムとして広く認知されている。最新の風車タービンのハブ高に適応した計測が可能だ。ただ、100ワット程度の電力を消費する。このため、燃料電池や自家発電装置などを設置して電力を供給する必要がある。現場での校正も必要。製造工場での定期的な校正も必要で、メンテナンスコストもかかる。

 ソーダーは大気中の熱力学的構造と乱流によって、音波の散乱を計測する技術を用いる。ライダー同様、高度化した最新風車ハブ高で計測でき、サイト間で持ち運びもできる。ソーダーシステムにもいくつか課題がある。その一つがノイズだ。大きなノイズは住宅地近隣で設置する際の課題となる。天候によってパフォーマンスが制限されることもある。

<<【特集】風力開発、カギ握る風況観測(1)に戻る

【特集】風力開発、カギ握る風況観測(3)へ>>