日本エネルギー経済研究所は、新型コロナウイルスの感染拡大が家庭部門の電力需要に与える影響を調査した。大手電力10社の電灯販売額は、感染拡大が本格化した2月以降、テレワークなどで在宅時間が増えているにもかかわらず、6月まで減少が続いた。この要因を数量と価格で分解すると、数量は増加要因だが、燃料価格の下落による電力の販売価格の低下が大きく影響していることが分かった。このため、燃料価格などの動向により、販売額が増加していく可能性がある。

 緊急事態宣言が発令された3月以降、数量要因が5カ月連続で増加に寄与する一方、価格要因が減少に寄与。10社計の2月の電灯販売額は前年同月比11.31%減で、6月まで前年割れが継続し、7月には同2.67%増で増加に転じた。

 気温影響をみると、例年と比べて3月は暑く、7月は寒かったため数量要因でマイナスに作用。このため、数量要因の増加は、外出自粛やテレワークによる在宅時間の増加が大きく影響したとみられる。

 一方、価格要因は2月以降では6カ月連続で減少に寄与。電力の販売価格は2カ月前の3カ月間平均の原油CIF価格から転嫁されるが、国際エネルギー価格は2019年末からの世界経済の減速から低迷している。

 今回の調査では、家庭の電力需要がテレワークで増加しているかについて、都道府県別のテレワーク普及率と、3~7月の販売電力量の対前年同月変化率の平均値を算出。テレワーク普及率が高い東京エリアでは、普及率の上昇と販売電力量の増加に相関関係が認められた。

 足元では電力価格が低下し、家計の電力への支出額が抑えられている。テレワークでは、企業が負担していた電力費用を家庭が負担することになるが、電力価格の低下で負担分は目立っていない。

 この点について、調査を担当した同研究所の相澤なつみ氏は、「こういう生活が長期化すると、家計への負担が顕在化してくる可能性がある。IT業界を中心に行われている在宅勤務手当の支給などの検討を、広く進めていくべき」と指摘している。

電気新聞2020年11月20日