前回紹介したように、東北電力のVPP実証プロジェクトでは、将来の事業領域拡大につなげるだけでなく、「地域」「法人」「ご家庭」のお客さまと当社が、相互にメリットを享受できるWin―Winの関係を目指している。最終回となる今回は、当社が自治体や企業と連携を進めている「自治体VPP(バーチャルパワープラント)実証」および「V2G実証」について、プロジェクトの概要や現在の進捗状況について解説する。
 

◇自治体VPP実証:自治体の設備を利用し地域防災と環境負荷低減を図る

 

 「自治体VPP実証」は、自治体が保有する太陽光発電設備や蓄電池などの防災用設備をエネルギーリソースとして、VPP技術を活用し最適制御することで、地域防災強化や環境負荷低減の実現に貢献することを目的としている。実証の期間は2018年度から20年度までの3年間。これまでに3市1県(仙台市、郡山市、新潟市および宮城県)と協定を締結し、各自治体の公共施設30カ所に対し蓄電池制御用のVPPシステムの導入を進めてきている。

 本実証で導入するVPPシステムは、各蓄電池の状態や電力値を統合的に監視するクラウドサーバー(蓄電池制御サーバー)と、同サーバーからの制御指示に基づき、蓄電池の充放電制御を遠隔で行うゲートウェイ装置(エッジコントローラー)で構成される。これまでに同システムからの充放電制御による蓄電池の応動評価や蓄電容量の劣化状態の確認など、基礎的な検証を完了しており、おおむね良好な結果が得られている。

 実証の最終年度に当たる今年度は、より高度な制御手法の検証を進めており、蓄電池の電力需給バランス調整機能としての活用や太陽光発電の余剰電力の有効活用など、自治体の蓄電池を活用した新たなビジネスモデルの構築に向けた検証を行っているところ。今後は実証で得られた成果や課題を踏まえつつ、制御可能な蓄電池リソースの拡大を図り、VPPの事業化に向けた検討を具体的に進めていくこととしている。
 

◇V2G実証:EVを電力系統に接続して充放電。アグリゲーター事業も

 
 電気自動車の蓄電池を活用した「V2G実証」は、経済産業省・資源エネルギー庁の補助事業である「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金V2Gアグリゲーター事業」に採択され、18年度より取り組んでいるもの。V2Gとは「Vehicle to Grid」のことで、電気自動車の蓄電池を電力系統に接続して充放電する技術。今年度はV2Gアグリゲーター事業が同補助事業のVPPアグリゲーション事業へと統合され、これまでの取り組みを拡張しつつ、引き続きV2Gの可能性に関する検証を実施している。

 本実証では、将来的に普及拡大が見込まれるEV(電気自動車)について、日産自動車、三井物産、三菱地所、リコージャパンと共同で、調整力としてのEVの活用可能性を検証したり、EVを活用した新たなビジネスモデルの構築を検討したりすることで、EVの普及拡大や地域社会の豊かな生活環境づくりへの貢献を目指す。

 18~19年度は、複数リソースの制御による指令値の確実な供出を確認するため、EVPS(充放電器)/EVを同時制御やリレー方式で制御し、充電指令や放電指令に対する追従性・応動性を確認。さらに、需給調整市場の三次調整力に相当(上げ下げDR)する試験も実施し、EVリソースの追従性・応動性が良好であることを確認した。

 今年度は、電力の需給調整に必要となる共通基盤システムの開発、調査・研究などを行うVPP基盤整備事業者と共同で行うVPP共通実証に参加。21年4月から開始する需給調整市場の商品メニューなどに応じた実証を通じて、市場参入に向けた知見獲得を目指している。

 当社としては、これまで行ってきた、VPPおよびV2Gの実証で得られた知見を、再生可能エネルギーの有効活用や、既存電力設備の効率的な運用などに生かしていくことで、「東北発のスマート社会」の実現につなげていく。

電気新聞2020年10月12日
 

(全3回)