東北電力では、「東北電力グループ中長期ビジョン」で掲げる「東北発のスマート社会」の実現に向けて、「VPP(バーチャルパワープラント)事業」の早期事業化・収益化を目指している。第2回となる今回は、当社が取り組んでいるVPP実証プロジェクトをはじめ、世界最大規模のVPP事業者である、ドイツのネクストクラフトベルケ社とのVPPに関する戦略的な連携について、実証プロジェクトの概要や現在の進捗状況などを解説する。
自治体などの太陽光や蓄電池などを活用。顧客への収益の一部還元も視野に
東北電力では、2018年4月より「VPP実証プロジェクト」に取り組んでいる。
本プロジェクトは、公共施設などに設置されている太陽光や蓄電池、企業・ご家庭のお客さまが保有している自家発電設備や空調機器といった多様な設備・機器を一括して遠隔制御し、VPPのエネルギーリソースとして活用するための検証を行うもの。プロジェクトの特長は、当社における将来の事業領域拡大につなげるだけでなく、東北6県と新潟県に密着した取り組みやサービスの提供を行い、地域課題の解決やお客さまの利便性向上に貢献し、当社と地域、お客さまとが相互にメリットを享受できるWin―Winの関係を目指すところである。
将来的には、収益拡大とお客さまへの付加価値の提供を目指す「拡張型ビジネスモデル」として、電力市場取引・相対取引で獲得した収益の一部をお客さまに還元するサービスや関連するエネルギーマネジメントの他、再生可能エネルギーのさらなる活用や電力系統の安定化、地域防災力の強化に資するサービスの提供を目指していく。
現在は、実証を通じて得られた知見を踏まえ、事業化に向けた検討を行っており、国内外のアライアンスパートナーと連携も視野に事業を展開していく。
VPPにおいては、地域に分散して存在するエネルギーリソースを最適かつ正確に制御することが重要になる。
ネクストクラフトベルケと蓄電池の制御を実施。高度な機能確認
当社は、19年5月に、日本国内の電気事業者として初めてネクストクラフトベルケ社とVPPに関する基本協定を締結した。
同社はドイツをはじめとして欧州で幅広く事業を展開する世界最大規模のVPP事業者であり、複数の多様なエネルギーリソースを正確に制御する技術など、VPPの豊富な知見と技術を有している。当社は、18年度からドイツ・ケルンにある同社の本社へ複数回訪問し、連携に向けた協議を実施。その結果、VPPの早期事業化や新たなサービスの実現可能性を高めることができるとの結論に至り、協定締結に至った。
同社との実証は段階的に進めており、最初の段階であるステップ1は完了し、現在は次の段階であるステップ2に進んでいる。
ステップ1では、同社のVPPシステムであるNEMOCSの基本機能を確認するため、ドイツにあるNEMOCSから、通信・制御装置であるNEXTBOXを介して、当社の研究開発センター(仙台市)にある蓄電池の充放電制御を実施。これにより、同社のVPPシステムが持つ高度な制御機能を確認することができた。
ステップ2では、制御対象を数・規模ともに拡大し、より多くの観点でNEMOCSの機能を評価する。現在は、当社実証に協力頂いている複数の事業者が持つエネルギーリソースを、NEMOCSから制御する実証を進めているところである。
今後、得られた知見を基に、さらに事業化に向けた検証を重ねるとともに、VPPを活用した電力市場取引など、将来を見据えた戦略的な連携についても併せて検討していく。
当社はこれらの実証を通じて、VPPの事業化・収益化を図り、地域のエネルギーの有効活用を具現化していくことで、「東北発のスマート社会」の実現に貢献していく。
電気新聞2020年10月5日