波照間島の可倒式風力

 日本最南端の有人離島で快記録――。沖縄電力は11月10日から14日までの100時間16分にわたり、波照間島(はてるまじま)の電力需要を全て再生可能エネルギー由来の電気で賄った。2018年11月に出した1時間47分の記録を大幅に更新した。波照間島には2基の可倒式風車(計490キロワット)があるが、モーター発電機と蓄電池を調整力として柔軟に活用することで、風力100%由来の電力供給を長時間、安定的に続けた。

 波照間島は沖縄本島から南西約460キロメートルに位置する小島で、約500人が住んでいる。沖縄電力は沖縄県の委託を受けて18年度から同島の再生可能エネを最大限に活用する実証事業を本格的に始め、一定の成果を上げた。
 
 ◇モーター発電投入
 

波照間島のモーター発電機。風力100%由来の電力供給の立役者になった

 波照間島の主要な供給力は5台あるディーゼル発電機(計1250キロワット)だ。風況が良い時に、風力発電の電気で島の需要を賄うためには、ディーゼル発電機の出力を極力下げて需給バランスを保つ必要がある。だが、ディーゼル発電機は内燃機関の特性上、出力を50%未満に抑えることができず、風力の出力を制限せざるを得なかった。

 ディーゼル発電機の制約で風力を十分に活用できない問題を解決するため、沖縄電力が投入した装置が「MGセット」と呼ぶモーター発電機(300キロワット)だ。17年度中に島内に設置し、18年度から実証事業として運用を開始した。

 鉛蓄電池とインバーターで構成する系統安定化装置と組み合わせ、風力の調整力として使う。モーター発電機は系統安定化装置の鉛蓄電池を駆動源にする。
 
 ◇出力制限が不要に
 
 モーター発電機はディーゼル発電機と違い、出力下限の制約がないのが大きなメリットだ。風力の出力を制限することなく、最大限に活用することができる。

 具体的には、波照間島の需要より風力の出力が大きい時にディーゼル発電機の運転を全台停止し、モーター発電機の運用に切り替える。風力の余剰電力は系統安定化装置の鉛蓄電池に充電する。モーター発電機を時には上げ調整力としても活用して需給バランスを一致させる。風力由来の電力を充電している鉛蓄電池が駆動源のため、風力由来の電力を上げ調整に使っているとみなせる。

 18年11月27日にはこのような運用で1時間47分間、風力100%由来の電力供給を続けたが、今月にこの記録を大幅に上回る快挙を成し遂げた。波照間島の電力需要が290キロワット~440キロワット(1時間平均)だった10日午前11時33分から14日午後3時49分までの100時間16分の間、全て風力由来の電力で需要を賄った。

電気新聞2020年11月30日