環境省は、企業からの温室効果ガス排出量の報告手続きをシステム化し、データ公表を1年早める。現在は紙媒体中心の手続きで事務作業に時間を要し、環境省が企業の報告を受けてから公表するまでに約2年かかる。デジタル化により1年は短縮できると見込む。システムを遅くとも2023年5月までに構築する。データ公表を早め、投資家が企業を評価しやすくする狙いだ。

 「デジタル・ガバメント中長期計画」として、18年度から進めている。地球温暖化対策推進法に基づき企業に課せられる温室効果ガスの算定・報告・公表制度だけでなく、地方公共団体の実行計画策定制度、フロン排出抑制法、経済産業省・資源エネルギー庁所管の省エネルギー法など、多くの報告業務をまとめてシステム化する計画だ。23年5月までにシステムを完成させる予定で、整備できた部分から順次使用できるようにする。

 算定・報告・公表制度による集計結果は現在、16年度分を最新版として公表している。公表したのは20年3月末。これをシステム化によって最新データの公表を1年早くする。第三者による企業への評価を促すため、公表データに企業の環境活動方針を盛り込むことも検討している。企業にESG(環境、社会、企業統治)投資を呼び込み、同制度の価値を高める狙いだ。

 環境省は算定・報告・公表制度を見直し、企業全体の温室効果ガス排出量だけでなく、事業所単位でも公表する方針だ。自治体が地域の温暖化対策を策定しやすくなる。

 現在も環境省に請求すれば事業所単位のデータを入手でき、年55件ほど請求がある。企業が権利利益を守るため保護請求して認められれば開示されないが、年5件ほどの保護請求が実現した事例は近年ない。こうした実態を踏まえ、環境省は企業の理解を得ながら、最初から事業所単位の排出量を公表する方針で制度見直しを検討する。

 自治体が50年に二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを宣言するようになり、地域内の排出量を把握するニーズが高まっている。環境省は報告業務のシステム化と、温対法関連の制度見直しを推進して脱炭素社会を実現する考えだ。

電気新聞2020年11月11日