IoTデータ活用の流れが加速する中、東京電力グループのエナジーゲートウェイでは、家庭の電力データを中心に多彩なサービスを創出・提供している。家庭内の家電ごとの電力使用量データを用いたサービス、さらに電気の利用状況をもとにした行動推定による見守りや介護事業分野へと発展させることができるのが特徴だ。本稿では、エナジーゲートウェイが取り組む「IoTプラットフォーム事業」について2回にわたり紹介する。
 

便利・快適から生活支援まで――すでに1万人以上が利用するIoTサービス

 

 東京電力グループのエナジーゲートウェイは、電力データを中心に宅内のデータを収集・分析し、世の中の多様なデータと掛け合わせることで、多彩なサービス創出を目指しているIoTプラットフォーム事業者である。東京電力グループで培った電力に関するノウハウと、同じく株主であるインフォメティス(東京都港区、只野太郎社長)の持つ人工知能(AI)技術を駆使し、エネルギーマネジメント(エネマネ)や家電制御、見守りなど「便利で快適」なものから、防災・介護・医療・保険など「生活必需」な領域まで幅広くサービスを創出・展開し、現在、既に当社プラットフォームを利用したIoTサービスの利用者は万のオーダーで拡大が進んでいる。

分電盤にセンサーを置き、電力波形から家電の利用状況を把握する

 核となるのが家電分離技術である。家庭の分電盤の主幹に高精度電力センサーを1つ設置し、そこから得られる秒単位の電力波形データをクラウド上でAI分析することで、複数の家電が同時に使用されている状態から、個別の家電の使用状況を把握する。すなわちどの家電がいつどれくらい使われたかを、メーカーや機種、年代によらず分離・把握することができる。その応用は家電の動作状態把握だけにとどまらない。家電は人が利用しており、裏を返せば家電の動きを捉えることで家庭内の人の行動を推定することができる。エナジーゲートウェイではこれらの考え方を基にサービス開発を行っている。
 

アプリで双方向コミュニケーション。AIも活用

 

 提供中の主なサービスとして、ビルダーや太陽光発電・蓄電池販売事業者向けの「エネマネ+顧客接点モデル」がある。これはエンドユーザー向けアプリ「ienowa」による見える化を通じたエネルギー管理に加え、事業者向けアプリ「hitonowa」による販売設備の動作状態把握による保守管理、また両アプリを連携した双方向コミュニケーションによる顧客満足度向上および継続営業機会確保を実現するもの。さらには太陽光発電の自家消費分の環境価値化や蓄電池のAI最適制御などのオプションも充実している。

 また、賃貸事業者向けの「省エネ推進モデル」は、電力使用量の予測やエアコン制御を組み合わせ、入居者が無理なく快適なまま省エネを推進できる仕組みを提供している。

 今後ますます加速するIoTデータ活用の流れを見据え、エナジーゲートウェイでは極めて柔軟なサービス提供形態を指向している。前述のサービスは、事業者のニーズに応じて提供範囲や内容をカスタマイズ可能である。また、今後様々なデータ活用事例が新たに生まれてくることを想定し、既にサービス提供済みの顧客に対しても簡単に上乗せで新たなサービスを付加できる仕組みとなっており、世の中の進展に合わせてシームレスかつ持続的に顧客への価値を高めていけるIoTプラットフォームを構築している。

 次回はデータ活用のさらなる応用として家庭内の人の行動推定にフォーカスした介護事業モデルについて紹介する。

電気新聞2020年9月7日