多面的な視点の下、ビジネスアイデアを練り上げる

 九州電力グループ(以下、九電グループ)におけるイノベーション推進の取り組み「KYUDEN i―PROJECT」では、社員のアイデアを起点にしたイノベーションや社外と共創するオープンイノベーションなど、様々なアプローチを用いてビジネスアイデアの創出に取り組んでいる。その取り組みの1つが、公募によるビジネスアイデア創出の取り組み「i―Challenge」である。以下では、i―Challengeの目的や取り組み内容について解説したい。

 

アドバイザーも取り入れて、多面的な視点で練り上げる

 

評価会には池辺社長ら経営層も参加

 i―Challengeの目的は2つある。1つは有望なビジネスアイデアを創出すること、もう1つは持続的にイノベーションを推進するための組織風土醸成や人材育成・発掘につなげることだ。

 i―Challengeは、2017年からこれまでに3度実施している。いずれの取り組みにおいても、経営層や社外アドバイザーによる評価の下、有望なビジネスアイデアを選抜し、具体的な検討につなげていくという点は共通している。その上で、目的の達成度を高めるために、取り組みを継続する中で毎回企画内容をブラッシュアップさせている。

 初回のi―Challenge1では、九電グループ全体を対象に「ビジネスアイデア」を公募。アドバイザーの指導を受ける機会は一部あったが、どちらかと言えば参加者が自力でアイデアを創り上げていく部分が多かった。初回の取り組みを通じて、よりアイデアの質を底上げするために、体系的なアプローチを用いた参加者育成のプロセスがあると望ましいという示唆が得られた。

 初回の振り返りを踏まえ、翌年のi―Challenge2は内容をアップデート。具体的には、アドバイザーによるレクチャーやメンタリング、ワークショップを通して、より多面的な視点の下でアイデアを創り上げていく育成の仕組みを設計した。また、育成の要素を取り入れるにあたって、応募段階では熱意を持ってアイデアを創り上げていくことができる「人材」を公募するなど、取り組み内容を発展させた。この翌年実施したi―Challenge3でもさらなる改善を図っており、参加者のモチベーション向上に重点を置いたイベントを実施する等の工夫を図った。
 

若年層からマネージャー層まで幅広く

 
 過去3回のi―Challengeに計350人を超える人材が参画しており、組織風土醸成や人材育成に寄与している。また、計10案件が採用され、そこから事業化案件も生まれるなど、着実に実績を上げている。

 採択された案件の中に、九電グループ外の企業や大学と共同提案された案件があることも特徴だ。i―Challengeでは、九電グループ社員がチームメンバーに含まれるという条件の下、九電グループ外の人材との共同提案ができる。これはオープンイノベーションの観点から外部との連携を推進しているためであり、それぞれの強みをかけ合わせることで、高い付加価値が創出されることを期待している。

 また、若年層からマネージャー層まで幅広い層から応募があることもポイントである。特にマネージャー層からの提案が多いのはi―Challengeの大きな特徴である。中には、斬新な視点を持つ若手と九電グループの強みを熟知するマネージャーが、それぞれの強みを生かして共同提案する例も見られる。イノベーションにおいては多様な人材による共創が重要であり、幅広い年齢層の参画が九電グループのイノベーションを支えている。

 このように、「KYUDEN i―PROJECT」では持続的なアイデア創出に向けて、社内外を巻き込み盛り上がり続けている。次回は創出案件の1つ、「九電ドローンサービス」について紹介したい。

電気新聞2020年8月24日