電気自動車(EV)の普及拡大に伴い、EVなどの充電設備(EVスタンド)は重要な社会インフラになりつつある。第3回は北海道における将来のEV化を見据え、北海道電力とINDETAIL(札幌市、坪井大輔代表)が共同研究を進めているブロックチェーン技術を活用したEVスタンドプラットフォーム(以下、EVPF)について述べる。最後にエネルギー(再エネ)と交通(EV)を連携した地域型EaaS × MaaSモデルの可能性について考察を加える。
 

ブロックチェーンでEVスタンドの取引決済などを一元管理

 
 北海道では、可住地面積100平方キロメートル当たりのEVスタンド数は5台(全国平均は30台)と少なく、EV自体の普及率は全国平均の3分の1にとどまっている。冬季間は暖房によるバッテリーの電力消費が大きく、広大な北海道を安心して走行するにはEVスタンド設置数の拡大が必須である。このため、北海道電力ではEV普及を後押しする手段として、EVスタンドオーナーとユーザーをマッチングするEVPFの検討を進めている。


 EVPFでは、各地に点在するEVスタンドをIoT機器と見なし、ブロックチェーン技術によりセキュリティーを確保しながらインターネットに接続する。これによりEVスタンドの各種情報や取引決済データの一元管理を行い、利便性の高いサービスを提供する。将来はユーザー自らがオーナーとなり、自宅のEVスタンドや充電器を提供するプロシューマーモデルなどへの適用も考えられる。現在、ソフトウエアレベルでの基本動作検証を終え、フィールド実証を検討中である。

 

EVPFを地域型MaaSと掛け合わせると・・・

 
 EVPFはEV充電用エネルギーサービスとしてのEaaS(Energy as a Service)に分類できる。一方、第2回で紹介したISOU PROJECT(以下、ISOU)は、過疎地の交通手段確保を目的に、オンデマンド交通サービスとして自治体がコミューター(EVバス)を運営する地域型MaaSである。これらは独立したプロジェクトとして検討を進めてきたが、ここでは共通の要素であるEVを接点に、EVPFとISOUを組み合わせた、地域型EaaS×MaaSモデルの可能性について考えてみたい。

 両サービスの連携により、再エネリソースとユーザーリソースの組み合わせが広がる。再エネ発電設備は、自治体や企業が所有する太陽光発電やバイオマス発電などに、個人が自宅に設置するソーラーパネルが加わり、これらにEVスタンドなどを設置することで、EVスタンドオーナーが拡大する。ユーザーはEVバスのほか、企業や個人が所有するEVが加わる。この結果、再エネリソースの広範囲なシェアリングが可能となり、その先の発展形としてライドシェアなどへの対応も想定される。

 本モデルにおけるサービス利用時は、EVPF、ISOUともに共通の専用トークン(ISOUコイン)の使用を想定している。これによりエネルギーセクターと交通セクター間の連携が強化され、EVの活用に伴う再エネ価値向上、エネルギーの域内消費、地域交通の確保、脱CO2など、インフラ全体の最適化が期待できる。また、ブロックチェーンに記録されるサービス履歴などの証跡データの活用により、利用実態を踏まえた設備更新計画やサービス内容の見直しが容易となる。
 

トークンにより埋もれた価値を可視化する

 
 現在、各地で検討が進む地域マイクログリッド構築では、エネルギーの地産地消が重要であり、本モデルは域内の再エネ電力をマネジメントする仕組みとしての活用が考えられる。

 ブロックチェーン技術はトークンにより地域の埋もれた価値を可視化・定量化し、様々なサービスやコミュニティーを結び付け、相互に支え合う仕組みを構築するための、地域活性化に資するツールと言える。

 北海道電力は地域に根ざした企業として、将来のエネルギーのシステムの在り方や新たなサービスモデルの検討に向け、ブロックチェーンなどの先端技術を活用した地域課題の解決など、地域との共創に取り組んでいく。

電気新聞2020年8月3日

(全3回)