MaaS実証の概要を説明するTISの砂山部長

 システム開発大手のTISなど4者は16日、電気自動車(EV)を活用した次世代の移動サービス「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の実証実験を浜松市で始めた。過疎地域の交通インフラ維持につなげるのが目的。EVは予約制の乗り合いタクシーとして運行する。実証は12月18日まで行い、事業化への課題やニーズを探る。将来的には太陽光発電で充電したEVを活用することで、再生可能エネルギーの地産地消も視野に入れる。

 EVを運行させる浜松市の佐久間地域は65歳以上の人口が6割に達し、高齢化と過疎化が進む。利用者の減少から公共バスや民間タクシーの撤退が相次ぎ、交通インフラの維持が課題となっている。

 実証はTISのほか浜松市、浜松市などが出資する浜松新電力(平形直人代表取締役)、乗り合いタクシーを運営するNPO法人「がんばらまいか佐久間」が共同で取り組む。TISが実証を取りまとめ、予約・配車システムを提供する。

 EV蓄電池の充放電と佐久間地域の公共施設に設置している太陽光の発電量を把握するシステムも導入した。実証では系統電源からEVを充電するが、将来的に地域の太陽光で賄うことも視野に入れている。

 がんばらまいか佐久間はEVの運行業務を担い、浜松新電力はEVの充電代を負担する。EVは日産の7人乗りワゴン車「e―NV200」1台を使う。利用者は電話の自動音声ガイダンスに従いEVを呼び出す地点と希望時間帯を入力。事前に配布したICカードを提示して乗車する。

 電話の利用が困難な難聴者にはタブレット端末を無償で貸し出す。TISが実証用に開発した予約アプリから現在地と目的地を指定しEVを呼び出す。

 実証は国土交通省の「2020年度日本版MaaS推進・支援事業」に採択された。実証期間中は補助金を原資にサービスを無料で提供し、実証後は有料に切り替える。

 利用料金は今後詰めるが、TISはMaaSに用途を限定した地域通貨での支払いを検討している。TISエネルギービジネス企画部の砂山広行部長は、「浜松新電力へのスイッチング(供給者変更)や自動車運転免許返納時の特典として地域通貨を付与するといった、自治体とのタイアップも考えている」と話していた。

 TISによると、既に約200世帯がサービスの利用を申し込んだという。実証中は週4回程度EVを運行し、延べ750人の利用を見込んでいる。

電気新聞2020年9月17日