北海道・厚沢部町で行われたISOU PROJECTの狙いは

 
 ISOU PROJECT(イソウ・プロジェクト)は、ブロックチェーン技術や電気自動車(EV)を用いて、過疎地域における交通やエネルギーの課題解決を図ることを目的としており、昨年夏、道南の厚沢部町にて約2週間にわたり実証実験が行われた。本プロジェクトはTIS(東京都新宿区、桑野徹会長兼社長)とINDETAIL(札幌市、坪井大輔代表)が設立した「ISOU PROJECT推進協議会」を推進母体としており、北海道電力はプロジェクトの賛同企業として実証実験に参加した。

 道南の厚沢部町は農林業を基幹産業とする町で、1960年の1万651人をピークに人口減少が続き、現在の人口は4千人を下回っている。高齢化率(65歳以上の割合)は41%であり、自分で車を運転することが困難な世代が増加する中、路線バスの本数は1日数本程度と限られ、日常生活における住民の移動手段の確保が問題となっている。

 こうした背景を踏まえ、ISOU PROJECTでは、EVバス(7人乗りワゴン車)を用い、厚沢部町の住民を対象に、通勤、通学、公共施設の利用、買い物などの用途で、住民の方々が使いたいときに呼べるオンデマンド交通サービスの実証実験を行った。また、EVバスの動力には、町内の太陽光発電の活用を想定し(今回は「道の駅あっさぶ」のEVスタンドにて充電)、エネルギーの地産地消と二酸化炭素(CO2)排出の抑制を考慮した。

 本プロジェクトでは、ブロックチェーン技術を活用し、EVバス専用の地域通貨であるISOUコイン(トークン)を発行した。住民は町内のスーパーや役場、郵便局、医療機関などの施設を利用することによりISOUコインを獲得し、EVバス利用の際は本コインを使用する。これにより町内における足の確保と消費の循環が促され、地域経済の活性化につながることが期待できる。

 EVバスには時刻表やバス停がなく、利用者の呼び出しで目的地まで運行する。スマートフォンのほか、電話による自動音声システム(CTI)からも呼び出しが可能で、高齢の方が利用しやすいよう配慮した。

 今回は、役場、病院、町営塾、スーパーなどを送迎対象とし、コインをチャージするための専用端末は、役場、郵便局、病院に設置された。チャージは専用カードをかざすか、スマホアプリのQRコードの読み取りにより行われる。
 

交通手段が不足する地方で、住民のニーズを確認

 
 本実証実験は、一定割合以上の住民の利用とニーズがあることが確認されたことに加え、現地視察者からは、高齢者へ配慮されたサービスであることや、地域通貨による利用者の地域内での消費活動の促進、再エネ活用モデルであることなど、高い評価を得た。

 一般的にMaaSは「あらゆる交通手段を統合し、ワンストップで予約・決済・利用を行うサービス」と認識されるが、これは交通手段が豊富に存在する都市部での利便性追求型サービス(都市型MaaS)である。一方、本取り組みは、交通手段が不足する地方において、地域内のリソースを有効活用し、生活の足を確保するための手段(地域型MaaS)と言える。

 厚沢部町では「世界一すてきな過疎のまち」を掲げ、町民にまちの魅力を感じてもらうための各種サービスの充実に努めており、本プロジェクトがそのための一助になれば幸いである。

【用語解説】
◆オンデマンド交通サービス 
利用者が事前に予約し、それに合わせて運行する地域の公共交通のこと。タクシーとバスの中間のようなイメージ。ユーザーニーズに応じて運行経路などを柔軟に変更可能なため、人口減少や高齢化が深刻な地域の活用に期待される。

◆MaaS(Mobility as a Service) 
様々な解釈があり、狭義では「複数の交通サービスの統合」、広義では、自動運転やカーシェア、配車サービスなど「新しい柔軟な交通サービス」を含む。本記事では「都市型」、「地域型」を区別している。

電気新聞2020年7月27日