九州電力送配電は再生可能エネルギーの出力制御について、昨年10月から運用方法を見直し、制御量を約2割低減した。さらなる制御量の抑制に向けて、確率論的手法を活用した出力制御の検討も進め、今秋から試験的に導入する方針だ。再生可能エネ対応のトップランナーである同社の先進的な取り組みに対しては、松村敏弘・東京大学教授が「高く評価すべきだ。すごく誠実な努力がみられた」と述べるなど、有識者からも高い評価を得ている。

 九州本土では、2018年10月に初めて再生可能エネの出力制御が行われ、18年度に26回、19年度に74回実施された。これまで出力制御の運用は、太陽光出力の予測値と実績値との過去最大の誤差を想定して計算。下げ調整力が不足しないよう、最大誤差相当発生時でも対応できる制御量を割り出していた。

 加えて、現地操作が必要な「オフライン事業者」は当日指令に対応できず、実需給断面で出力制御が不要となった場合でも出力制御を行ってきた。

 九州電力が19年10月に始めた新手法では、誤差を過去3年間の平均値とすることで制御量を低減。加えて、前日指令をオフラインの太陽光設備に割り当てた。当日、平均誤差以上の太陽光出力が発生した場合は、停止操作を遠隔で実施できる「オンライン事業者」の太陽光設備を実需給の2時間前に制御して調整するようにした。

 今月16日の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の系統ワーキンググループ(WG、座長=荻本和彦・東京大学特任教授)では、九州電力送配電が新手法の状況を報告。19年10月~20年3月の出力制御実績を分析したところ、これまでの運用に対し、出力制御量の低減率は全体で約2割となった。1事業者当たりの制御回数も低減できた。

 さらに、九州電力送配電は先を見据え、「アンサンブル予測手法」と呼ばれる確率論的手法を用いた運用を検討している。

 今回の新手法で用いた平均誤差では、天候や風の変化など需給日の気象特性が考慮されていない。確率論的手法を使うことで、気象特性に応じた、より実需給に近い誤差量を割り出せる可能性がある。

 同社が19年度下期の出力制御実績を使って、出力低減効果をシミュレーションした結果、現行比7%程度の低減効果があることが分かり、今秋から試験的に運用を見直す方針。

電気新聞2020年7月28日