東京電力パワーグリッド(PG)と関西電力送配電は5日、脱炭素化とレジリエンス強化に向け、分散型エネルギーリソース(DER)の活用を推進するための協議会「スマートレジリエンスネットワーク」を設立したと発表した。DERの利用拡大、有事の際のDER活用、事業機会拡大の3テーマを3年程度かけて検討する。幅広い分野の企業・団体に声を掛けており、今後は30者程度が参加する見通しだ。

 協議会には東京大学の山地憲治名誉教授、東京大学大学院の森川博之教授、国際環境経済研究所の竹内純子理事・主席研究員、早稲田大学理工学術院の林泰弘教授など有識者も参加する。代表幹事は山地教授、森川教授、東電PGが務める。

 5日に開いたリモート会見で、東電PGの岡本浩副社長は「データをつなげることでDERをうまく活用できる。長期的には経済の活性化にもつながっていくと考えている」と、協議会を設立した意義を語った。

 協議会では、災害時に電気自動車(EV)から電気を供給したケースなど好事例を集めながら、他のDERを組み合わせることでより効果的に活用できる方法などを検討していく。DERの価値評価と利用拡大、有事の際のDER活用とレジリエンス強化、DERによる事業機会の拡大と収益確保についてそれぞれワーキンググループを設けて検討する。

 山地教授は「DERはレジリエンスにとどまらず、脱炭素に向けた再生可能エネルギーの調整力としても活用できる。配電やアグリゲーターのライセンス制など制度的基盤も整備されつつあり、今後はリアルなビジネスとして展開していくのではないか」と期待を示した。

 現在、企業からの参加は東電PGと関西送配電の2社のみだが、今後は他の企業・団体にも参加を呼び掛けていく方針で、通信やガス、運輸、商社、研究機関などが加わる見通し。森川教授は「多くのステークホルダーに入ってもらい、多角的視点で新しい価値の創造につなげていきたい」と語った。

電気新聞2020年8月6日