商船三井が運航している砕氷型LNG(液化天然ガス)輸送船が23日、日本に初めて入港した。船名は「ウラジミール・ルサノフ」で、北極圏のヤマル半島(ロシア)の基地で生産したLNGをアジアに運んでいる。今回は8万トンのLNGを積んで6月29日に基地を出航。北極海の航路を氷を割りながら東に向かい、アラスカを経由して、LNG購入企業である東京ガスの扇島LNG基地(横浜市鶴見区)に寄港した。東回りは西回り航路に比べて航行日数が短く、輸送コストや温室効果ガスの削減に貢献できるとしている。
商船三井はヤマルLNG事業向けに砕氷型LNG船を3隻、在来型LNG船を4隻運航しているが、「ウラジミール・ルサノフ」は2018年3月に運航を開始した砕氷型で最初の輸送船だ。全長299メートル、幅50メートルで、最大厚さ2メートル10センチの氷を割りながら進む能力がある。これまでは中国にLNGを輸送していたが、日本向けの輸送は初めてとなった。
ヤマルの基地で生産したLNGをアジアに運ぶ場合、欧州を経由する西回り航路は比較的氷が薄く、一年中航行できるが、氷の厚い東回り航路は夏季のみ航行できる。航行日数は通常で約15日と、西回り航路の半分以下になる。
ヤマルLNG事業はロシアの大手ガス企業ノバテクがオペレーターとなり、17年12月に生産を開始した。公称のLNG生産量は年間1740万トン。22日にオンラインで会見した商船三井の松坂顕太常務執行役員は「エネルギー資源が豊富な北極海にアクセスできることは、日本のエネルギー保障上も意義深い」と強調した。
電気新聞2020年7月27日
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