経済産業省・資源エネルギー庁は、1つの需要場所に系統から複数の配電線を引き込む行為などを一定条件のもとで認める方針だ。現行の託送制度は「1需要場所、1引き込み、1契約」が原則だった。分散型リソースの普及で、多様な系統接続ニーズが出てくることを想定。災害対応を含むレジリエンス(強靱性)、環境適合性向上などに資する場所に限って容認する考えだ。1つの需要場所に引き込んだ配電線から、他の複数の需要場所に配電する行為なども認める方針。

 28日に行われた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の電力・ガス基本政策小委員会(小委員長=山内弘隆・一橋大学大学院特任教授)で、エネ庁が論点を提示した。

 こうした行為で生じる費用は、電気の使用者または小売電気事業者の特定負担になる見通し。保安規制などの順守も徹底させる。

 今回の制度変更は、レジリエンス向上などにつながる。昨年の台風19号では、地下に受変電設備を設置しているタワーマンションで、浸水による長期間の停電が発生した。例えば、1つの引き込みから複数の需要場所に配電できるようになれば、タワーマンション同士を自営線でつなぎ、片方が系統から遮断されても、もう一方のタワーマンションから電力供給を受けられ、長期間の停電を防ぐことができる。

 この他、28日の小委では、アグリゲーターなどの活用を念頭に創設した「特定計量制度」も議論。国への届出などを前提に、計量法に基づく検定を受けない特例計量器の使用を可能とするもので、2022年4月に施行される。新制度では、電力市場での取引など電力系統の電気と混ざって取引される場合、一般計量器との間で公平性の観点から整合性を確保する必要があり、事務局が論点として提示した。

電気新聞2020年7月29日