高砂熱学工業が増産しているバリフローⅢ

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、空調設備工事各社が医療施設向け装置の増産やサービスの提案などを進めている。新型ウイルスの感染収束の見通しは立っておらず、製品・サービスへの需要は高い。各社は本業で培ってきた空調技術の開発と提供を推進し、新型ウイルスの感染拡大防止に貢献する考えだ。

 様々な抗菌技術を持つ新日本空調は2017年2月、東京電力ホールディングス(HD)の福島第一原子力発電所へ「電解水マスク洗浄システム」を納入した。

 同システムはアルカリ性電解水と微酸性電解水の製造装置をユニット化。除染作業者が使用した全面マスクの脱臭とノロウイルスの不活化を効率的に行っている。この実績を生かし、新型ウイルス感染者を受け入れている大学病院へ、同社で生成した次亜塩素酸水の提供を始めた。

 また、同社は独自の微粒子可視化システムを有する。同システムはウイルスが空気中をエーロゾル(エアロゾル)となって飛散し、空気感染の可能性を映像で可視化するもの。感染経路の特定に役立っている。

 高砂熱学工業は新型ウイルスの感染拡大を受け、4月に医療用クリーンブース「バリフローⅢ」「バリフード」の増産に着手。これまでは両製品とも月10台程度生産していたが、バリフローⅢは月産30台、バリフードは月産40台へ増やした。両製品は5月までに複数の病院へ納入済み。引き合いも依然として強い。

 新菱冷熱工業は5月に営業と設計担当者による「換気見直しチーム」を編成。6月から医療施設などに対し、院内環境を安全に保つための換気の見直し提案を始め、問い合わせも数件来ているという。

 同社は換気の状態を高精度に再現できる数値流体シミュレーション(CFD)技術や室圧制御システムの設計技術を有する。陰圧室用漏えい防止装置「セパレア」、医師側に清浄な空気を供給しながら病原体を室外に排出する空調システム、診察室用クリーンパーティションなどハード面でのニーズにも応える。

 一方で、ダイダンの取り組みは社会貢献の意味合いがより強い。同社は5月、中国電力や三菱重工業などが参画する「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に署名。自社の保有する製薬や医療環境に関する一部の知的財産を一定期間開放し、権利を行使しないことにした。

 同社はSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行をきっかけに製品化した病室、待合室、診察室向け陰圧化・空気清浄ユニット「INFシリーズ」などを持つ。知的財産の開放により「産学官が連携し、様々な開発・製造・提供が推進されることを期待したい」(同社)としている。

電気新聞2020年6月17日