総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の「持続可能な電力システム構築小委員会」(委員長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長)は20日、先の国会で成立した「エネルギー供給強靱化法」の詳細設計に関する議論を始めた。託送料金制度改革や分散化電源への対応、長期的な電源投資の予見性確保など、検討事項は山積している。20日はそれぞれの論点を事務局が説明。山地委員長は「電力システム改革の新たなステージに入っていく」との認識を示し、全体最適、長期的視点の観点から議論を進めると強調した。

 6月に成立したエネルギー供給強靱化法については、災害時の電力データ活用など一部は施行されているが、多くの事項は施行に向けて検討すべき論点が残されている。このため、持続可能な電力システム構築小委では、1~2カ月に1回程度会合を開いて議論を進める。
 
 ◇利益に躊躇せずに
 
 強靱な電力ネットワークの形成に向け、託送料金を改革する。送配電事業者の収入に上限を設定する「レベニューキャップ制度」を導入。一般送配電事業者の経営は大きく変わることになる。収入上限の審査方法や変更の考え方、効率化分の扱いなど課題は多岐にわたり、同小委と電力・ガス取引監視等委員会が連携して検討する。

 議論のキックオフとなった20日は「コスト効率化のモニタリングを厳しくやるとイノベーションが阻害される」(大橋弘・東京大学公共政策大学院院長)、「事業者が利益を出すことに躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。果実がないとエンジンがかからない」(圓尾雅則・SMBC日興証券マネージング・ディレクター)といった意見が出た。

 この他、ネットワーク関連では、地域間連系線などの増強費用を全国で支える仕組みについて、同小委で詳細設計の議論が進められる。
 
 ◇分散化や投資確保
 
 電力システムの分散化への対応、長期的な電源投資を可能とする制度も検討する。市町村や街区など特定エリアで配電網を運用する「配電事業者」制度を創設。収益性の高いエリアが切り出されることで他エリアの収支が悪化する「クリームスキミング」に配慮しながら制度設計する。

 また、分散型電源などを束ねて供給力として提供するアグリゲーターを「特定卸供給事業者」として新たに位置付け、制度の詳細を議論する。

 太陽光パネルなどを備えた家庭とアグリゲーターの電力取引を促進するため、電気計量制度の合理化も進める。計量法の検定などの規定を適用除外とする方針で、事業者が従うべき基準などは専門家で構成される新たな検討委員会で技術的議論を行う。

 平時の電力データの活用に向けた検討も行われる。国が監督する認定協会を通じて、個人など需要家の情報がサービス事業者に提供される仕組みで、消費者保護や情報セキュリティーを担保しながら詳細設計する。

 さらに、電源投資の確保に向けた検討も行われる。発電事業者に長期的な予見可能性を与える制度措置について議論する。初入札が行われた容量市場は、4年後の1年間に提供される供給力に対価を支払う制度で、長期的な収入の見通しは難しいという課題がある。まずは議論のキックオフとして、既存の4市場(卸電力市場、容量市場、需給調整市場、非化石価値取引市場)によって、発電事業者の収入がどう変わるのか整理する方針だ。

電気新聞2020年7月21日